(2010年5月12日 大阪高裁第4回裁判) 陳述書

補助参加人 渡部やえ子

私は、枚方市の公立保育所で時間外保育の保育士として働いています。
今から丁度5年前、大阪地裁差し出しの重々しい封書を玄関先で受け取ったのを今でもはっきりと覚えています。
それは、見たことも、聞いた事もない「訴訟告知書」というものでした。内容も全く見慣れない、聞きなれない字面が並び日常生活には無縁のものに思え、もしその時点で、その告知書を引き出しの奥にしまい込んだとしたら、この5年間の裁判に対して、憤慨することもなく、まして、このような場に立つこともなかったと思います。

原告の訴訟告知理由を読んで私は驚きと強い怒りを感じました。とても許しがたい言葉で書いてあったからです。私は今でもその言葉に対する怒りを拭い去る事ができません。『非常勤職員は、違法な「特別報酬」を受け取り、法律上の原因なくして公金から利益を得て枚方市に損失を及ぼし、しかも法令違反につき悪意の受益者である』と書いてありました。
真夏は炎天下の下で汗水を流し、冬は夜も明けぬ暗い道を自転車で職場に向かい、常に子どもたちの健やかな成長を願いながら誠実に働いてきたのに、「悪意の受益者」呼ばわりは、あまりにも私たちを侮辱しています。

毎月の報酬は、教育費や生活費にすべて消えてしまい、一時金だけが頼りでした。労働条件に沿って支給された一時金は本当にありがたいものであり又、仕事への励みでもありました。枚方市給与条例に基づき、枚方市の議会も認めた特別報酬を受け取ったがゆえに「不当利得」と裁判を起こされては、私たちは被害者同然です。

第一審判決で、非常勤職員は204条の常勤の職員であると認められたことは確かに大きな変化でしたが、その一方で、給与条例の不備を理由に、結局私たちに「特別報酬」の返還を命ずる判決では、前進したことにはなりません。私たちが関わりようもない給与条例主義を引き出し、私たちに法律だけを押し付けた理不尽な判決です。

裁判がこれほど長引くとは想像もできませんでしたが、私たちは、裁判を起こされたからといって、仕事に対する姿勢は変わることなく、責任を果してきました。
市民生活に密着した重要な仕事であり、この先、職がなくなることはなく、むしろもっともっと、市民に寄り添いサービス向上に努めなければならない教育、福祉の分野の職種です。本来なら正規職員が担うべき仕事を正規職員の40%の賃金で枚方市の人件費削減に大きく貢献してきました。私たちが受け取った「特別報酬」を返還しなければならない理由は、どこをさがしても見つかりません。

非正規労働者も一時金・退職金をもらって当たり前という思いは全国の非正規労働者も同じで、大阪高裁の判決に期待し注目しています。
又、均等待遇にも影響を及ぼす裁判でもあり、世界から大きく遅れをとっている均等待遇実現の流れに加速をつけるような判決が下される事を大阪高裁に強く望みます。