2012年1月13日
大阪自治体労働組合総連合
書記長 荒田 功
昨年の大阪市長選挙において、新市長となった橋下徹氏は、新聞報道によると「職員組合と市役所の体質をリセットする。組合の事務所には庁舎から出て行ってもらう」と労働組合に敵意むき出しで公言している。
その背景(理由)としているのは、連合・大阪市交通労働組合の役員が勤務時間中に大阪市長選挙の報告集会に参加したことが「職務専念義務に違反」する。あわせて「庁舎内で、前市長の推薦者カードが配布されていた」との指摘があったとされている。
橋下市長は、その指摘を受け「今までは組合が推したトップが市長に当選してきたから許されたのだろうが、僕は一切許さない。公の施設で政治活動はあってはならない」と述べ、報道陣に対し、まず組合事務所貸与に対する減免をゼロにし、2012年3月末にも退去を求める考えを示した。
橋下市長の一連の言動は、自治体労働組合の存在・機能そのものを形骸化させ、自治体労働者の権利を侵害するばかりでなく、正常な労使関係のもと効率的な行財政運営と地方自治の発展に寄与し住民福祉の向上めざす地方自治体本来の役割からしても重大な危険性をはらんでいる。
そもそも橋下市長のいう「政治活動」の概念が定かでないが、本来労働組合は賃金労働条件の改善や働きやすい職場環境の実現をめざして結成されているものの、その目的を達成するために制度改善など「政治的な活動」を行う事は官民を問わずに広く認められているところである。
自治体職員で構成する自治体労働組合が公的施設内でニュース配布や交渉など組合活動を行う事は憲法28条の趣旨からしても当然の権利である。退去と発言されている組合事務所については、施設内に事務所をおくことも労働組合法からしても認められることである。
橋下市長は「大阪市役所の組合(連合・大阪市労連)の体質が、今の全国の公務員の体質の象徴」と批判し、「市民感覚に合わせることが日本再生の道」だと?特異?のパフォーマンスでメディアを利用し、住民と自治体労働者の分断を図っているが、一部高級官僚は別として、東日本大震災の復興・支援に象徴されるように多くの公務員は住民のくらしを守るため真面目に働いている。さらに、橋下市長は2月議会に「組合の活動を適正化するため」の「行政と組合の適正な関係を明記したもの」と「職員の政治活動を律したもの」の2種類の条例を提出すると伝えられている。ここでも「適正化」の概念が定かでないが、条例で労働組合を縛り、自らの統治下におこうとするものであり、労使対等の原則から逸脱するものである。条例制定の理由の一つに労働組合の人事権への関与が取りざたされている。本来こうしたことはあってはならないし、仮にそのような事態があれば当局として毅然と排除すべきであり、条例制定の理由にはならない。
以上のように、橋下市長の一連の言動は、?独裁?的手法そのものであり、さらに加速することは間違いない。先の選挙で、構造改革のもとで大阪市民・府民に広がった閉塞感から得た、「改革」への期待を逆手にとり、大阪市職員の賃金や人員を減らし、組合事務所を排除したとしても、大阪市民の生活や暮らしが好転するものではない。むしろ、住民にとっては、その生活を支える担い手であるべき自治体職員がますます遠ざかり、悪方向につきすすむことにほかならない。
大阪自治労連は、2012年春闘において「教育基本条例」「職員基本条例」制定を許さない闘い、閉塞感を打開するための府民要求実現の闘い、そして大阪市労組の仲間とともに橋下市長の一連の横暴を許さない闘いを一層強化するものである。