地方自治の未来に夢と展望を

自治労連と同近畿ブロック主催の「公開シンポジウム“地方自治を語る”」が、2003年3月1日(土)大阪市内のOMMビルで開かれました。

自治体職員だけでなく地方議員・研究者・住民運動家など、160人を超える参加者がつどい、住民の目線・住民が主人公の自治体をめざし交流と学習を深めました。
 シンポは、近畿ブロック副議長の畦布和隆氏の司会で開会。自治労連中央執行委員長の駒場忠親氏あいさつのあと、コーデイネータの保母武彦氏(島根大学教授)が基調的発言。保母氏は、「いま自治体は、地方自治を伸ばしているところと、重圧でつぶれかかっているところと、大きな差がひらいており、元気にするためにどうするかが問われている。例えば、長野県では職員と住民の意識改革(長野モデル)により、大型公共事業でなく、地域にある良いものを伸ばしていく運動が住民とともにすすめられている。公共事業のあり方の原則をつくった。どこを見てすすむのか。財政は厳しく困難はあるが、可能性はある。地域で住民と行政がお互いに支える協働の力で財政も解決してきている」と、ユーモアもまじえながら語られました。
 つづいて3名のシンポジストが発言。まず、昨年11月に当選した白井文氏(尼崎市長)は、「就任して2カ月。先日タクシーに乗ったら、市長さんや。投票前に記者を乗せたら、絶対とおれへんといっていたけど、絶対とおると言ってやった。市民は見てるんや。市長さん急いだらあかん、4年あるんや、頑張りや、と言われました。議会も含め大変ですが、大勢の市民の尼崎を変えたいの期待にこたえます」と力強い決意が述べられ、「現実は財政も厳しい。前市長の経営再建プログラムも少ないが見直しもした。
それを市民と一緒に台本なしのタウンミーティングを6カ所で800名の参加で行った。厳しい質問があるやろうな、と思っていたが、市民どうしも意見を交わすなど、市民が活発で生き生きとしていることに新聞記者も驚いていた。やって良かった。これが地方自治だと思った。これから何を変えていくか。市民のみなさんと情報を共有して取り組んでいく」とし、参加者からの大きな拍手をうけました。
 藤永のぶよ氏(おおさか市民ネットワーク代表)は、「住民の側から地方自治を見てみたい。自治に住民が参加できない現在のシステムはおかしい。規模が大きくなればなるほど、そうなっている。香川県豊島の産廃問題で島の長老が、もともと独自の村だったが合併して土庄町になった。単独の村であったら、村長もいて、9割の住民が反対していたので産廃は受け入れなかった。と話されているように、自治は自分たちのことを決める権限があってこそ自治ではないか。自治体が一番考えないといけないのは、安心して健康に暮らしていけること。そして、職員は住民の幸せのために働いていることに仕事の基本をおいてほしい。住民も職員も、おかしいものには、おかしいのと違うかの声をあげることが大切」と自治の本質について語られました。
 自治体労働者の立場から辻義則氏(滋賀自治労連委員長)は、「どういう視点で自治体労働者が仕事をするのか。自治労連は、地方自治の理念・課題・運動の方向を示している“地方自治憲章”と、自治体労働者は憲法にいう全体の奉仕者を権利とする“自治体労働者の権利宣言”をもち、これを視点としている。現状は、かつての地方行政と比べても、国との係わりや住民との関係で悩みも矛盾も激化しているように思う。あたたかい行政と思っても、国の悪政を押し付けられている。憲章と権利宣言の立場から打開していくことが大事になっている。一方、住民の中からは大きな運動がおきている。滋賀でも豊郷町での学校守れの運動、日野町での市町村合併反対で町民の半数の署名など、住民運動が活発になっている。自治体労働者は、住民運動に依拠し住民の幸せを実現する行政への流れをつくるよう、ひと踏ん張りが求められている」とし、自治体労働者と自治体労働運動の課題が話されました。参加者から意見や質問も出されてさらに討論を深め、最後に町田豊治氏(近畿ブロック議長)の閉会のあいさつでシンポを終了しました。
 参加者からの感想は、「白井市長の発言は、心に響いた」「4名すてきな方ばかりで、一番眠くなる時間帯でしたが、一言一言聞き逃さないようにしました」「中身の濃いシンポだった」「それぞれの発言に新鮮さを感じました」「大変面白い試みであり、ぜひ第2弾・第3弾を」など大好評でした。参加者それぞれに、地方自治のあり方に何かを感じとってもらえたシンポとなりました。

 

 いま、地方自治体のあり方が問われています。不況による税収不足、ムダな大型開発による借金、財政危機、公的事業の民間委託、押しつけの市町村合併など、地方自治の危機です。一方で、「脱ムダ 暮らし応援の自治体を」「住民が主人公の自治体を」の運動が拡がってきています。住民の目線で考え行動する自治体が求められています。こうしたとき、公開シンポジウム「地方自治を語る」を開催します。ぜひ、ご参加下さい。

 ■日時■
   3月1日(土)
   午後1時30分開会〜4時30分

 ■場所■
   OMM(大阪マーチャンダイズ・マート)
   2F会議室

 ■参加費■
   1000円(資料代)

 ●どなたでも自由に参加できます

■ シンポジスト ■

白 井  文氏  (尼崎市長)
藤永のぶよ氏 (おおさか市民ネットワーク代表)
辻  義則氏  (滋賀自治労連委員長)
■ コーディネーター ■

保母 武彦氏  (島根大学教授)

■ 会場案内 ■  (下の地図をクリックすると拡大します)

■電車でのご案内 ■車でのご案内

●京阪電車
  「天満橋」東出口→OMM B2に連絡

●地下鉄谷町線
  「天満橋」北出口(1)→OMM B2に連絡

●<名神高速>=豊中ICより
  阪神高速(市内)乗継
●<阪神高速>
  守口線・・・南森町出口→西料金所
  環状線・・・北浜出口→東料金所
  東大阪線・・・法円坂出口/森ノ宮出口→東料金所

共催・日本自治体労働組合総連合・同近畿地方ブロック協議会
〈連絡先〉自治労連近畿地方ブロック協議会 大阪市北区天神橋1-13-15 TEL 06-6354-6214



■ シンポジスト プロフィール ■
白 井  文 氏(尼崎市長)

1979年4月 大阪外国語大学入学・休学の後に全日本空輸(株)入社のため中退
1979年4月 全日本空輸(株)入社 全日空ではキャビンアテンダント(スチュワーデス)として11年3ヶ月勤務し国内・国際線に乗務して接客に携わる
1990年6月 全日本空輸(株)退社 セルヴィ代表就任
1992年4月〜1997年3月 大阪YMCA国際専門学校講師
1993年6月〜2001年5月 尼崎市議会議員
1993年4月〜2001年3月 ひょうご小売商業支援センター商業問題登録アドバイザー
2002年11月17日 尼崎市長に当選
各地商工会・商工会議所の指導講師・農林水産大臣認定事業「国際フードサービス士」講師・近畿通商産業局「起業を担う人材育成システムに関する調査研究」委員

藤永のぶよ 氏(おおさか市民ネットワーク代表)

 生協の運動から環境問題へ。大阪府能勢町にあるゴミ消却施設の調査にも参加、ダイオキシン問題の解決のためデンマークへ視察に
 また、デンマーク西北部のトゥイ市のフォルケセンターという研究所で研究活動。ゴミ問題、環境問題のエキスパート

辻  義 則 氏(滋賀自治労連委員長)

1947年3月9日 滋賀県長浜市に生まれる・55才
1965年4月 滋賀県庁に入職
1976年6月 滋賀県職員労働組合書記長
1978年5月 労働組合の統一を実現
1978年5月 滋賀県職員組合書記長
        その後、副委員長などを歴任
1994年4月 滋賀県職員組合執行委員長
1994年9月 滋賀自治労連執行委員長
       〜現在に至る  

保母 武彦 氏(島根大学教授)

1942年生まれ
名古屋大学経済学部卒業、大阪市立大学大学院経営学研究科博士課程単位修得退学。
島根大学法文学部助教授を経て、現在、島根大学法文学部教授
豊かな汽水域を後世に活かす市民会議代表、21世紀環境委員会委員
日本環境会議理事、自治体問題研究所理事
専攻:財政学・地方財政論・地域経済論