[UpDate:2006/4/22] | |
「市場化テスト」〜自治労連パンフ徹底理解 |
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2006.3.24 弁護士 城塚健之 | |
4 市場化テストのねらい |
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(1)パブリックビジネスの拡大市場化テストは政府のスリム化と市場化を同時に追求するためのツールですが、今日では特に市場化の側面に力点があるように思います。それは、「官製市場」「パブリックビジネス」という分野が新しい投資先としてものすごく注目を浴びているからです。これは世界的な現象です。要は過剰資本の行き先をどこに求めるかという問題です。オーストラリア国立大学教授のテッサ・モーリス−スズキ氏は、「私生活の分野」と「公共の分野」の双方にどんどん資本が入って来るという問題を論じておられます。このような過剰資本が、たとえばヘッジファンドとして発展途上国に流れていって、1国の経済をひっかきまわしては引き揚げたり、あるいはライブドアのように敵対的企業買収などという方面に流れていったりしていますが、これと同じように、「パブリックビジネス」の分野に流れ込もうとしているわけです。日経BP「パブリックビジネスレポート」2005年10月号には、「4つの手法を駆使し、“お役所仕事を奪う”」として、「市場化テスト 導入間近!官業開放の主力ツール」、「指定管理者制度“オイシイ施設を選べるかが鍵」、「PFI 注目は火葬場、病院、刑務所」、「構造改革特区 規制撤廃にも使える汎用ツール」といった刺激的な見出しが並んでいます。 PFIについては、単に施設を建設するだけではなく、運営の側面が大きい業務が儲かるそうで、そのような領域が狙い目とされています。刑務所なんて儲かるのかしらと思われるかもしれませんが、刑務所というところは囚人の監視だけしていればいいというところではありません。囚人の衣食住を含めた生活全部の面倒をみないといけないし、病気になることもあるし、働かせないといけないし、そのためには外から業務も受注しなければならないし、労務管理も必要だし、仕事はたくさんあるということで注目されているのです。の構造改革特区については、市場化テストがメジャーになってくれば廃止される可能性もあります。 こうした「パブリックビジネス」がなぜオイシイかといますと、先行投資の要らない安全な投資分野だからです。指定管理者制度と同じで、企業は施設建設という初期投資をする必要がない。入れ物(施設)はもうできているわけです。あとは安く人を使って、プラスアルファの商品を売れば収益があがる。それで先行投資の要らない安全な投資分野として注目をあびているわけです。しかしこれは逆にいえば、税金が投入された公共財が特定企業の利益追求の道具にされてしまうということです。本当にそれでいいのかという問題です。でも、そういうことは「パブリックビジネスレポート」では一切触れられません。いかに儲けるかということにしか関心がないからです。 (2)なぜ市場化テストかなぜ、財界から市場化テストが求められているかという理由を、他の制度との比較でみてみます。
(3)市場化テストの民間提案少し古くなりますが、市場化テストの民間提案として寄せられたものをみていくと、資本にどんな領域が狙われているかがよく分かります。
これらのうち、国の業務については、あらかた今回の法案の対象に入っています。地方自治体については一部だけですが、今後どんどん拡大する可能性があります。 (4) モデル事業(2005年度 3分野8事業)【p24〜25 Q7、8】以上のうち、ハローワーク、社会保険庁、行刑施設(刑務所)の3つでモデル事業が行われています。制度としての市場化テストはまだできていませんが、民間委託の形でやっているわけです。(5) 大阪府の市場化テスト【p29 Q14】これとは別に、大阪府は「官民競争型」と「提案アウトソーシング型」の2つ類型をやると言っています。このうち、「官民競争型」とは、いま市場化テスト法案として説明した中身とほぼ同じだと思います。これに対して「提案アウトソーシング型」とは、市場化テスト法がなくてもできる単なる民間委託だと思います。単なる民間委託だけども、民間から提案を受けてコンペをやって、包括的で長期的な委託契約を結ぶような類型だろうと思います。 このように、自治体が率先して独自の動きをするというのもあるわけです。 |
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