>>第16回大阪地方自治研究集会 [UpDate:2007/3/10]

[税と社会保障分科会]
「負担と給付を考えるシンポ」を開催


 2月10日(土)に、府民団体や住民方含めて64人の参加で「負担と給付を考えるシンポ」(主催:第16回大阪地方自治研集会実行委員会)を開催しました。冒頭、主催者を代表して谷委員長が「安倍政府のもとで福祉から雇用への流れが作られ、セイフテイネットを整備するのではなく、どう自立させていくかが成長力に基づく底上げの戦略とされているもとで、社会保障とは何かという議論を広げる時期にきている。住民の利益を守る仕事になっているかを点検し、改善させる運動を広げていきたい」と挨拶。


憲法にもとづく3つの体系の社会保障

 二宮厚美氏(神戸大学教授)から「社会保障構造改革と地域からの対抗運動」と題して講演。二宮氏は、社会保障は憲法に照らして社会保障が現金給付と現物給付、公的ルール・規制の3本柱で体系づいていること。この3つの体系が現在の構想改革で言えば、現金給付が限定化と水準抑制、現物給付は撤廃、規制は緩和・撤廃という路線が描かれていることを、介護保険や障害者自立支援法で受益者負担が強化され、公的保育に対する認定子ども園の導入など具体的な運動と攻撃の内容をわかりやすく話されました。そして、ホワイトカラーイグゼンプションにも触れて、労働法制の適用除外は格差社会の新しい事態を進行させる。正規や非正規、勝ち組、負け組というのは格差には違いないが、その格差は上下ではなく、左右の二極化で、イグゼンプションは、ホワイトカラーも成果を求められる仕事で完全に企業の中の請負労働者になること、労働運動の長い歴史が築いてきた今までの仕組みを覆す規制緩和であると強調されました。


ナショナルミニマムに立脚した底上げ運動を

安倍政権の消費税増税と社会保障構造改革、国と自治体の再編成の流れのなかで、運動をすすめる私たちは、ナショナルミニマム・最低賃金と年金保障、生活保障を連結させていくことが重要。今、憲法25条で定める基準、朝日訴訟で明らかになった生活保護基準に達しない人は、全労働者のなかの非正規労働者の8割の1500万人と推計され、そのうち一人世帯に絞り込むと1000万人近い人がワーキングプアになり、ナショナルミニマム原則に立脚して底上げの運動が必要になっている。
また、「格差」には、階級的格差と階層的格差の2重の格差があること、格差の是正とは平等を実現することが重要とされました。
これからの社会保障運動は、関係者の大同団結で経験を動かした障害者運動、利用者と労働者の連携で運動を強めた保育運動、貧困の問題が大きな社会保障運動のエネルギーになっている教訓を踏まえ、格差と貧困の両方から社会保障の底上げの運動に立ち向かうべきと問題提起されました。


2007年税・社会保障大運動を

大阪社保協の寺内順子事務局長から「2007年税・社会保障大運動」を、昨年6月に高齢者を中心に役所に住民税・国保・介護保険の納付書を手に怒りに殺到したこと、今年6月に住民税がまた大幅値上げされること、黙って6月を迎えるのか、2月3月に地域運動して6月を迎えるのかは私たちの運動の真価が問われる」と特別報告。

そして「高額所得者優遇の経過と地方財政への影響」(原田税務部会長)、「地域社保協運動で自治体労働者が果たしている役割と期待」(矢野西淀川社保協事務局長)、「権利としての生活保護をめざして」(秋吉大生連事務局次長)、「生存権保障と自治体労働組合」(可児福祉部会長)と、4人の方から実践報告がありました。

参加者からは「格差と貧困の理論整理ができた。現場労働者の負担と利用者の負担に胸が痛む」「専門性の欠如、経験不足、業務が継承されないなどの福祉事務所の問題がよくわかった」「生活保護だけでなく、ナショナルミニマムでの運動が必要ということが理解できた」などの感想がよせられました。

大阪自治労連は、07春闘を具体的にどれだけ負担増になるか、税金の使われ方の問題を宣伝するなど労働組合・自治体労働者が顔を見せて行動するとともに、政治の流れを変える運動に住民との連帯と共同で取り組むことを呼びかけました。