[UpDate:2006/4/22]

「市場化テスト」〜自治労連パンフ徹底理解

2006.3.24 弁護士 城塚健之

1 「小さな政府」

(1)小さな、しかし強い国家の姿

 「小さな政府」というのは、別に最近言い出した言葉ではなくて、オイルショック時の資本主義の全般的危機といわれた時代に登場したイギリスのサッチャー政権、あるいはアメリカのレーガン政権のあたりからいわれていた概念です。

「小さな政府」の目的は、ご承知のように、企業や高額所得者の租税負担を減らすために、巨額の支出を伴う社会保障サービスを削り込むことにありますが、そこでどういう国が目指されているかということは、「松下政経塾魁の会」というところが今から15年前ぐらいに出した本にも書かれています。これによりますと、市町村合併、道州制を進めていき、国は外交、防衛、経済、金融政策、警察、国土政策だけを担い、あとは全部民間でやるという国の姿が示されています。先ごろの選挙では松下政経塾出身の議員がずいぶん増えましたが、15年前の本に書かれた内容がその後一貫して追求されてきたことがわかります。


(2)「小さな政府」の作り方

 「小さな政府」を作るためにやるべきことは、1つはリストラであり、もう1つは公務の市場化です。このための法律がこれまでにもいくつも作られてきましたが、いわばそれが仕上げの段階に入っていて、現在、「競争導入による公共サービスの改革法」(市場化テスト法)と「行政改革推進法案」の2つの法案が国会にかかっているという状況です。

「市場化テスト法」は2月10日に閣議決定をして、当初はあっという間に通ってしまうのではないかといわれていましたが、そうはならなかった。3月10日、一月遅れで閣議決定をされた「行政改革推進法」とあわせて、予算が通ったあとの国会の山場にこれが可決されるという。たぶん5月ぐらいに通るのではないかといわれています。

なぜそうするかというと、この法案を審議することで国民の小泉人気がさらに高まるだろうという思惑からだろうというのです。すなわち、公務員バッシングとともに、こうした小泉の構造改革が多くの国民に支持されている、だから、この2つの法案も国民受けするだろうという判断です。ほんとうに国民が軽くみられていると思います。

2 行政改革推進法案【パンフp2】

 行政改革推進法案は、「行政改革の重要方針」(05.12.24閣議決定)の掲げたメニューのうち、社会保険庁の廃止(公的年金、政管健保の解体的出直し)以外の部分を含むものです。

 ここで「行政改革の重要方針」のメニューを眺めていきますと、まず政策金融改革ということで、商工中金、日本政策投資銀行を統合し民営化していく。あるいは国民生活金融公庫等を統合民営化していく。官が保有しているマネーを民間の金融機関に流していくということです。

それから、独立行政法人を整理統合し、非公務員化を進める。そして、総人件費改革ということで、公務員数を削減する。地方では5年以内に4.6%以上削減するという数字が出てましたね。それから給与制度改革ということで成果主義を導入していく。あと政治的な意味を含めて公務員制度改革がはいっている。

 政府資産・債務改革というところでは国有財産の売却です。これは最近よく新聞に出ていますが、要は国のもっている資産をどんどんカネにかえていく。
 そして、社会保険庁の廃止(公的年金、政管健保の解体的出直し)、規制改革・民間開放その他いろいろあるわけです。
 これらでスリム化を図るとともに、市場化テストも含めて公務をどんどん市場化していくというのがもう1つの柱です。
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