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〜学校給食分科会報告〜

子どもにとって学校給食とは
−民間委託の光と影

2004年11月6日(土) 吹田さんくすホール

学校給食分科会は、「豊かで安全な学校給食をめざす大阪連絡会」(給食連絡会)と「集会実行委員会」の共催で開催。

「子どもにとって学校給食とは−民間委託の光と影」と題した私学集会・シンポヴシウムを開催し、約70人が参加しました。
●「食教育」から「食農教育」へ、多様な担い手とネットワークの構築を
樫原先生が基調講演で問題提起


集会では藤田給食連絡会の主催者あいさつの後、給食連絡会の樫原正澄会長(関西大学教授)が次の内容で基調講演をされました。

1954年に制定された学校給食法では、学校給食の目的に
<1>日常生活における食事について、正しい理解と望ましい習慣を養うこと、
<2>学校生活を豊かにし、明るい社交性を養うこと、
<3>食生活の合理化、栄養の改善及び健康の増進をはかること、
<4>食糧の生産、配分及び消費について正しく理解に導くこと
と定められていた。

しかし1976年に米が過剰となり、米飯給食が導入された時点で、学校給食が「消費市場」としてとらえられるようになった。その後1980年代に入り、文部省(当時)が「学校給食運営の合理化について」の通知を出し、その後民営化が促進されるようになった。

一方、0−157事件を契機に学校給食の安全性の議論が高まった。農業の重要性についても見直されるようになり、食と安全に対する国民の関心や要求も高まっている。食と農の距離が拡大する中で、学校教育においても「食教育」から「食農教育」へ発展させることが重要である。地産地消の一環として地場産食材の学校給食への活用が行われ始めている事例もある。

農業就業者が高齢化しており、今後は、新規就農者の役割が大きく、都市消費者による援農・就農が進展していること、日本型食生活が「崩壊」しようとしている中で、これを守り発展させることが必要である。

今後の課題として、
(1)「地域生活の快適性」「地域の食材の豊富さ」「自然環境の多様性の保持」「地域における食と文化の結合の重要性」をふまえ、食の基盤としての農業のあり方を考えていくことか大切であること、
(2)学校教育・給食を「食農教育の場」として位置づけること、
(3)地域における農業との交流の促進、保護者・学校・行政・JA・農業生産者との連携を強化すること、
(4)地産地消を推進すること。そのために、多様な担い手とネットワークを構築すること
が重要である。その意味で、「学校給食連絡会」の位置と役割は大きい。

◆安上がりで安全性に大きな問題が
  −民間委託された実態を報告


特別報告では、大阪府下で学校給食が民間委託されたところの実態について報告がされました。

府障教からは府立養護学校給食の民間委託について報告。
食数が500食必要な八尾養護で落札した業者の委託料は789万円。53食の八尾市立養護の委託料911万円よりも安く、「まともに調理員を雇用できるのか」「障害に応じた段階食を実施できるのか」「アレルギー除去食ができるのか」の不安の声があがっていること。

箕面養護では、アレルギー除去対象を除去食の味付けに使ってしまい、栄養士がたまたま発見して未然に防止したこと、スパゲティの麺がふやけてうどん状になってきたこと、味が以前に比べ濃い目になるなど調理の基本も不十分であること、調理員に未経験者が多く、学校栄養士の指示書だけでは対応できず、学校長も「安心して委託されたとはいえない」と業者へ要望書を提出した実態が明らかにされました。

堺市の実態について栄養士より報告。
3年ごとに委託業者の指名競争入札が行われパート調理員が多く大型回転釜などの調理に不慣れであること。調理に臨機応変な対応ができず、「十分に煮る」と書いたマニュアルを誤って解釈して十分間で煮てしまった例があること、栄養士は調理員といっしょに昼食をともこともできず、「栄養士は調理員に深入りするな」といわれていること、委託になって責任が分散されていることが心配であることなどが報告されました。

八尾市の実態について「連絡会」より報告。
委託された業者では、給食調理員が最賃に近い劣悪な労働条件で雇われていること。委託するときに前提とされていたPTAが参加する四者協議会が十分に開かれていないこと。委託校の栄養士が職業安定法に違反して、委託業者と共同で調理作業を行ったり、業者従業員に対して指示したりせざるをえない状態にあることが報告されました。

討論では、吹田市が「給食のつどい」を市内10中学校区で開催し、約1,000人の参加で成功させたこと。住民宣伝ビラを発行し、市民から意見・要望を聞くとりくみを労働組合として進めている経験を報告。門真市の調理員、堺市の学校教員、八尾の連絡会が民間委託に対するとりくみの経験について発言がありました。

今後は、直営を堅持している自治体では、民間委託の実態を明らかにして直営を守り発展させる運動をすすめること、民間委託されているところでは、直営に戻すことを展望しながらも、当面、自治体に責任をもった委託ルールを確立させるとりくみが必要であることが提起されました。

参加者からは「民間委託の実態について生の声を聞き、子どもたちにしわよせがいっていることを痛感した」「養護学校まで委託されているのには驚いた」「子どもたちに食教育をするためには中学校まで給食が必要だと思う」「民間委託を闘っている市について、ノウハウを冊子にしてほしい」「委託されている学校の見学会を実施してほしい」などの感想が寄せられました。

-2004.12.13-