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機関紙-自治体のなかま-

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公務労働と任期付職員制度を考えるシンポに100人超える参加 公務に有期雇用がいいのか、社会的に問い直そう! [2010.7.29]

7月25日、真夏の昼で周辺は天神祭で人通りも多く、落ち着かない雰囲気のなかでのシンポジウムでしたが、会場のエルおおさかの会議室の定数の70人を超える102人の参加者が熱心にシンジストらの発言に聞き入りました。当日は、府下15単組・本部76人と自治労連本部や京都・兵庫自治労連、大阪労連や他産別などからも参加がありました。

市民と向き合い、いっしょに運動を

 主催者あいさつに立った前田大阪自治労連委員長は、「07年に非正規対策委員会を立ち上げ、この間処遇改善に向けたパンフを2回発行してきた。非正規職員には2つの苦難、(1)年収が200万に満たない、給料が上がらないという生 活の苦難、(2)公務に関わり続けたいという意向を無視される仕事上の苦難があり、自治体に働く職員全体の課題として取り上げ、一定の前進をしてきた。

一方で、不安定雇用や一時金・退職金の廃止、一部の市民からの裁判、任期付への置き換えが起こってきている。官から民への構造改革の結果、自治体業務の非正規化が財政危機を理由に人員削減の方策として市民に直接接する部門ですすめられてきた。それを見直す動きも出てきたが、参議院選挙の結果、構造路線の復活が懸念される。いま市民と向き合って行動をすすめる必要がある。市民と一緒にその背景に何があるのか交流をすすめ、運動をすすめていきたい」としました。

城塚弁護士「雇用上限のメリット・デメリットは?」と問題提起

 コーディネーターの城塚弁護士(大阪法律事務所)は、兵庫県加西市が市役所の仕事をあらかた民間に任せる方針を打ち出し、職員をまずは現行の718人から3割の200人程度にし、将来的には1割の70人程度にしようとしています。いまでも正職員は44.7%であり、十分民間に任せられるとして、民間スタッフにほとんどの業務をまかせようとしている例をとりあげ、「市役所の仕事を安い賃金で働かせようとしているが、誰のために仕事をするのかが問われている」としました。

 そして、「本来市役所の仕事は正規職員でやるのが原則だったが、法律の建前と実態は食い違っている。現場の実態との違いはどういう問題があるのか。公共性が十分なのか、不十分なのか。雇用の安定では、賃金労働条件は本当のところどうなのか」と問いかけ、任期付職員制度について、「(1)当局が導入したがる理由は何なのか、(2)雇用の上限を設けている制度のメリット・デメリットは、市民、労働者にとってどうなのか、(3)どのような制度が望ましいのか」など問題提起がされました。

清川氏「質の違い、最終的に不利益をこうむるのは市民」

シンポジウムでは、まず初めに朝日新聞の清川卓史記者から「公務が有期雇用でいいのか?」を市民目線で考えるとして、「関心ある第三者として、最後に困るのは誰かと考えると、サービスの利用者としての“市民”が最終的に不利益をこうむることになる。生活保障の分野では、貧困ビジネスへの対応がちゃんとできずに、把握ができないということは、結局放置することになり、税金のムダつかいになる。しかし、窓口サービスの質の違いが外部からはよくわからない。消費生活相談員や東京都のDV相談員も専門的知識、経験を備えた非常勤職員が行政を支えている。大阪市の生保高齢世帯は、非常勤職員が1人280ケースを受け持っているが、認知症などで介護保険への橋渡しができなければ孤独死にもつながる。質の違いは、話を聞けばわかるが、話を聞かないとわからないので、そこがごちゃごちゃになっている。重要なサービスには、3年〜5年の経験が必要だが、児童虐待への対応も経験が短い職員という実態がある。一般の企業に置き換えても、3年未満のものばかりでは企業は成り立っていかない。外部から見ると(サービスの)質がわかりにくいが、よい例、悪い例を利用者に地道に示していくことが重要ではないか」と提起しました。また、「日本は、欧州などに比べて公的サービスの絶対量が少なく、その少ないところからさらに絞ることは考えられないという発想も必要ではないか」と指摘しました。

平氏「経験短い派遣に労災多発、公務の有期雇用に危惧」

続いて、民間の労働者の立場から平佳子地域労組おおさか書記長からは、民間の有期雇用労働者の実態について、「多くの非正規労働者が有 期雇用契約であり、パート・契約社員で6カ月〜1年、派遣・請負は1カ月〜3カ月の雇用契約になっており、多くは更新が前提の有期雇用であるものの、いきなり『雇い止め通告』され相談に来るケースも少なくない」として、具体の事例を紹介しました。さらに、仕事の経験期間が短い派遣労働者の労災事故が多発していることから、公務労働への任期付職員制度導入への危惧が語られました.


越門事務局長「任期付導入大阪が突出、任期の定めのない常勤職員を基本すべき」

3人目の大阪自治労連の越門弘志非正規対策委員会事務局長からは、この間取り組んだ「任期付職員制度の実態調査(中間集約)」について報告し、大阪府下の任期付職員制度の導入が全国に比べても突出していること、さらに広がる傾向があることを明らかにしました。また、最近では導入に際して、大阪市や茨木市のように非常勤職員の雇い止め問題が発生していることを指摘し、「任期付職員の共通した思いは、雇用の継続だ。当局はコスト削減のために、正職を非常勤職員や任期付職員に置き換えようとするが、恒常的業務については、任期がきても続く仕事なので、任期の定めのない常勤職員で行うのが基本だ」と話しました。

ここが問題と職場、民間、利用者からの告発〜フロア発言〜

フロアからは、「仕事大変で、年10人指導員やめるが、長く経験してこそ丁寧に対応できる。安心して働き続けられるよう団結して頑張りたい」(寝屋川市学童保育指導員・任期付短時間勤務)、「辞令交付後に賃金カットがあると知らされたり、3年で完結する仕事と言われたが、3年で解決しないケースがほとんど。また、3年任期なのに公務員は終身雇用だから雇用保険は加入できないと言われたりなどおかしなことばかり」(大阪市ケースワーカー・任期付フルタイム職員)、「親の立場からも、指導員には子どもの成長、発達を促す豊かな経験・知識が必要だと思う。3年では無理、任期付は全くメリットがない」(茨木学保協)、「民間福祉職場では、介護保険導入後非正規労働者の雇用が広がり、職場の最前線を守るかたちになっている。障害者支援のところでは、現場の非正規が雇い止めされたら発達保障もできない、まさに権利侵害状況となる」(福祉保育労)、「枚方非常勤裁判の関係で05年度から任期付をやむなく導入することになったが、枚方市に住んでよかったと思ってもらえるように仕事全力でやっている。3年ごとに人が変われば、発達が保障されるのか」(枚方市肢体不自由児介助員・任期付短時間)、「3年任期だが、保育所は6年で卒園。子ども・親との信頼関係築くにも時間がいる。若い任期付保育士は、正職と同じ仕事をしながら賃金が低く、不安定な雇用で将来が見えない。正職と任期付との壁がなくなればもっとスムーズにいく」(枚方市保育士・任期付フルタイム)など6人が発言しました。

「問題点を地道に訴えること」清川氏
「市民・社会の構成員として考える必要あり」城塚氏

フロア発言を受けてシンポジストの清川氏は、「市民には、サービスを利用する市民と納税者としての市民がおり、日本の場合は家庭に押し付けてきた結果、サービス利用者が少数派のため納税者としての市民からの批判の声が強かったが、最近は生活保護の記事も結構かけるように変わってきた。今後、公的サービスは利用せざるをえないし、範囲も増えていく。地道に訴えていくしかない」としました。

最後に、コーディネーターの城塚弁護士から「(公務での有期雇用が)何が一番罪つくりかというと、社会的弱者である子ども・老人・病人などとの信頼関係が切断されることだ。出発点は、なぜ子どもと保育士との関係を断ち切るのか、メリット、デメリットは何なのか、全体としてどう考えていくのか、市民・社会の構成員の1人として考える必要がある」と締めくくり
ました。

 

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