●三位一体改革と地方財政の危機

(1)小泉内閣と「三位一体改革」

 本試算の結果を見る前に、平成17年度における三位一体改革の全体像について簡単に解説しておきます。三位一体改革とは、本来的には、国庫補助負担金の廃止、地方税財源の拡充、地方交付税の改革の三点を同時に行い、地方分権社会の実現を財政的な面から目指すものです。

 現在の小泉内閣は、政権公約として、4兆円規模の国庫補助負担金の削減をうたい、2004年度から2006年度の3か年度で、改革を完成させるとしています。

 改革初年度の2004年度では、国庫補助負担金の削減額1兆300億円、地方交付税の削減額2兆8600億円、税源移譲等の額が4500億円という結果となり、地方財源は3兆4000億円もの削減となりました。このため、予算編成にさえ窮する自治体が続出したり、公立保育所運営費負担金の一般財源化を口実とした、保育料の値上げや保育ービスの切り下げという形で、住民生活に悪影響を及ぼしました。これに対して、全国知事会をはじめとした地方自治関係者から、国の財政再建のためだけの一方的削減として強い批判がおこりました。

 これを受けて昨年は、地方6団体が国庫補助負担金削減案を国に提出し、地方の再利用を拡大すること、普遍的な税源を地方に移譲すること、地方交付税の財源保障機能を維持することなどを要求しました。ところが、昨年11月の「政府・与党合意」では、補助負担金の削減が地方の裁量拡大につながらないものとなり、税源移譲も恒久的・普遍的な税源の移譲という地方の要求とは遠いものになり、昨年大幅な削減で地方の強い反発を招いた地方交付税は現状維持としたものの、議論の中で地方交付税の大幅削減を主張する財務省の意向が表面化し、地方自治の未来にとって明るいものにはなっていません。

(2)05年度の三位一体改革

 その政府・与党合意のもとで作成された05年度の地方財政計画によると、05年度における三位一体改革の額は、次の通りです。

 まず、国庫補助負担金の削減額は、1兆8000億円程度。そのうち、一般財源化につながるものは1兆1100億円程度、残りは交付金化もしくは純然たるカットです。

 税源移譲は、本来のものではなく、税源移譲予定交付金、所得譲与税による移譲です。このうち、市町村にも配分される所得譲与税は、05年度では1兆1159億円(うち市町村分は4割)ですが、これには、04年度の所得譲与税の分を含んでおり、05年度の改革額は、約6500億円です。

地方交付税は、地方交付税本体は現状維持とされていますが、基準財政需要額の振り替えである臨時財政対策債は、23.1%、1兆円のカットとなっています。地方交付税の内容は、投資的経費と経常経費のかい離の是正が行われました。つまり、前者から後者へ地方自治体の財政運営の実態にあわせて、3500億円が振り返られました。また、自治体の職員1万人純減といったリストラを前提とした算定になっていることも見逃せません。

 一方、地方税は、地方財政計画の中で、1兆円の増収が見込まれており、地方税と地方交付税と臨時財政対策債からなる一般財源は前年度並みに確保されたと政府・総務省は言っています。

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-2005.3.26-