[UpDate:2006/4/22] | |
「市場化テスト」〜自治労連パンフ徹底理解 |
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2006.3.24 弁護士 城塚健之 | |
5 公務の市場化の問題点 |
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(1) 国民の安全・安心破壊【p2】
(2)人権保障低下自治労連パンフで問題点として具体的に指摘されているのはここまでですが、私がもっと書いてほしかった問題があります。それは「サービス」の低下ではなく「人権保障」が低下するということです。法案ではあちこちには「サービスの質」という用語が出てきます。「サービスの質は落としませんよ」ということをいわんばかりです。 しかし、自治体の業務を「サービス」という言葉で表現することに違和感があります。サービスというのはお金で買えるものです。しかしながら、地方自治というのはそんなものではないだろう。そこでは住民が主権者として参加します。主権者というのは公的な意思決定に参加していくということです。そこでは、もちろんサービスという面もありますがそれだけではないはずです。市場化テスト法案ではサービスとしか書いてありませんから、住民はお金を出して購入するという存在だけでしかとらえていない。そこでは住民は「主権者」、「人権享有主体」ではなく、「顧客」、「消費者」という位置づけになっている。しかしながら、「顧客」「消費者」はお金を持っていて初めてなれるわけです。お金を持っていない人は帰れとなる。そういう点では、所得に応じたサービス購入、所得に応じた人権保障ということになってしまう。 最近、マスコミでもようやく格差社会がクローズアップされてきました。そして、たとえば就学援助世帯が広がっている問題がとりあげられたりしています。こうした格差社会を前提とし、また、所得再分配機能の放棄によりこれを拡大再生産するために公務サービスが機能するようになってしまう。これはわれわれがもっともっと追及していくべき問題ではないかと思っています。 (3)民主的コントロールの低下市場化テスト法案の説明を聞いて既におわかりかと思いますが、この制度には民主的なコントロールを図るという場面がまったくありません。民間企業の意見は聴いても自治体の意見は少し聴くだけです。国民の意見は聴かない。あとは、どういうふうに選ぶのかわけのわからない「官民競争等監理委員会」が仕切っていくわけです。ほんとうに民主主義がなくなってしまっている。自治体の場合にも、議会が関与するのは契約締結の場面のみで、あとは全部国と同じ仕組みです。 これは、「市場原理」がもっとも「効率的」だから、民主的なコントロールが必要ないと割り切っているのではないかと思います。 しかし、何が一番効率的かとなれば、これは全体主義です。何しろ一部の者が決めたことにあと全部の者が従えということだからです。何でも市場にまかせろというのも、これと構造的には似ています。これではとんでもない未来になります。それはまた不正や癒着の温床になると思っています。 (4)労働権の軽視(分限免職、雇用劣化)先ほど、民間企業が落札した場合に、そこで働いていた公務員(正規職員)が分限免職などになってしまうというお話をしました。他方で、落札企業で働く多くは不安定雇用労働者です。こうして、社会全体の「雇用の劣化」(身分の不安定化、賃金労働条件の低下)を推進することになります。最近、「ワーキングプア」の問題がクローズアップされています。一所懸命働いているのになおかつ生活保護水準に達しない人のことですが、これがものすごく増えている。最近は正社員の賃金がどんどん下がってきて、正社員として働いてもパートとして働いている人と大して変わらないという状況も生まれてきており、それが「ワーキングプア」といわれる層を構成しています。公務の市場化はこうして広範囲の労働者の雇用条件を劣化させていきます。 |
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