人事院規則改正案についての大阪自治労連パブリックコメント [2010.7.21]
1.意見
1)非正規職員に対して事実上「3年上限」の制度を導入することに反対する。
2)仮に国の機関での「制度改善」につながったとしても、地方公共団体等における非正規職員の雇用契約と業務実態からすれば重大な悪影響を与えることが懸念されるため、「人事院規則改正」が地方公共団体に影響を及ぼさないよう措置することを要望する。
2.理由
1)について
業務の実態が1日ではないのに「任期が1日単位」であることのかい離を解決することは理解するにしても、「1年任期」として、「例外的に公募に寄らず2回までは採用する」として事実上3年上限の雇用制限を設けることの合理的理由はない。むしろ実態として恒常的業務であれば期限の定めのない短時間勤務職員とすべきである。
これは、業務の実態とともに当該非常勤職員の生存権の確保に責任を持つ雇用者としての義務である。同時に、最も社会的規範が求められる公務職場、特に国の機関で事実上の「3年上限」が制度化されると地方公共団体のみならず民間職場も含め「3年で解雇」の不安定雇用が増大する可能性があり、「3年上限」に反対する。
2)について
人事院規則の改正と言えども現実的には地方公共団体等に及ぼす影響は大である。今、自治体職場では少なくない非常勤職員が恒常的基幹的業務を担っている。例えば、現場に非正規職員のみの配置で業務を担っている公民館・郷土資料室職員や学童保育指導員。正規職員の代わりにクラス担任として配置されているアルバイト保育士や正規職員と同じ作業工程に配置されている保育所や学校給食の非正規調理員、カウンター業務や行事の運営をまかされている非正規図書館司書など、いずれの職種も恒常的基幹的な業務を担っている実態がある。このような実態を踏まえ、正規職員化や期間の定めのない短時間勤務職員制度の確立など雇用の安定に資する抜本改善を図ることが求められている。
大阪の自治体では、昨年総務省が出した「4.24公務員課長通知」を受けて、長期に継続勤務していた非正規雇用労働者に対し、3〜5年の有期雇用制度や3年任期である任期付職員制度の導入が進められ「雇い止め」(解雇)が現に発生している。
茨木市では労働組合の反対を押しきって10年・20年とその業務に従事してきた学童保育指導員が任期付職員制度の導入により雇用止めとなり、新たな採用試験実施で現職指導員数名が不採用となった。その結果、5つの現場で指導員が総入れ替えとなる事態が起こり、引継ぎもされないまま配属された指導員が児童や保護者の把握に戸惑う中で、児童や保護者からは不安の声が高まっている。
また、大阪市でも継続的な任用更新がされてきた非正規保育士に突如「任期付き職員制度」を導入し、公募による試験を行い長年にわたって市の保育行政を支えてきた職員の雇用止めが発生した。ここでは、不安定な雇用条件であるために採用試験に合格したにもかかわらず辞退する受験者も多く、結果的に現場で欠員が生ずる事態となった。大阪市では生活保護のケースワーカーや事務職への制度導入が行われ、いずれの職員も、任期が終わると職を失い生活の糧が奪われることへの不安を抱えながら仕事をしている。
また、任期付職員制度や非正規職員の配置が拡大されることで正規職員への負担加重、正規職員と非正規職員の役割分担の曖昧さによる相互のストレスの増加による健康破壊なども看過できない。
今回の人事院規則改正案は、「4.24公務員課長通知」に追い打ちをかけるものとなり、自治体非正規雇用労働者の雇用の不安定化に拍車をかけるものである。雇用の安定は、労働者の生活上重要であるだけでなく、研修や経験の積み重ね等により職務遂行能力を高め、住民サービス向上につながるものであり、この立場からも「3年上限」は容認できない。
「採用しようとする期間業務職員の官職に係る能力が、期間業務職員としての勤務実績により実証できると明らかに認められる」というのであれば、勤務実績による採用を2回までに制限すべき理由はない。まじめに働き、経験を重ね専門性を養い、現場の一員として能力を発揮しているにも関わらず、競争試験などでふるいにかけ雇い止めするなどというのは、労働者の人格を踏みにじるものである。
今日の日本社会では、派遣切りなど働くルールが破壊され「貧困と格差」の是正が問題になっているもとで、民間の規範となるべき国が「非正規労働者の雇用3年上限」を打ち出すことは、民間労働者にとっても重大な影響を及ぼす。
従って、地方公共団体等において恒常的基幹的業務を担っている非常勤職員については、業務の実態と本人の生活保障、住民サービスの向上の視点から「3年上限」を適用しないよう地方公共団体への具体的な措置を図るよう要望する。
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