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I 市民のくらしから 「格差社会」の実像

>>自治体職場からの告発レポート

[UpDate:2006/5/13]
I 市民のくらしから
      「格差社会」の実像

 「規制緩和」「構造改革」路線がいかにくらしを破壊しているかについて、労働者、商売人、市民の立場からリアルに語ってもらいました。

 「トヨタの史上空前のもうけ」の対極にある史上最高の保険料・掛け金、最低の給付と賃金などは、“結果”としての「格差」でなく、“つくられた”「格差」です。

15〜16時間労働で、睡眠は4時間
男性 26歳 システムエンジニア2年 月手取り25万円 現在病休中

コンピューター技術にあこがれていたので、岡山県の高校卒業後、大阪市内のコンピューター専門学校(4年制)に入りました。就職難だったけど、「大卒に負けるな」と先生からも激励してもらって、インターネットで探しまくって2002年4月にAシステム大阪営業所でシステムエンジニアの仕事(正規)が決まりました。

勤務時間は、8時40分〜17時30分でしたが、いつも終わるのは午前0時、遅いときは午前3時の時もありました。周囲の同僚のなかにはうまく立ち回る人もいましたが、いわれると仕事を受けてしまう人は残業に次ぐ残業で、自分もその一人でした。残業手当の請求を出すと、上司から「残業しないでやってくれ」といわれ、「時間内でできるわけがないのに」と思いながら、請求を引っ込めざるを得ませんでした。

毎朝、8時20分に起床、食事抜きで出勤。午前中の仕事のメドがつかないで昼食をとっていると「なぜ、食事ができるのか?」といわれました。会社の食堂は、食事時にはおかず等の入った冷たいお皿が並び、各人がお盆に取り、レジは機械計算されて、給料から天引きされるシステムです。15分ほどでかきこんでまた仕事に戻ります。外食すると、時間がかかるから基本的には会社ですませます。購買部でパンを買ってかじりながらパソコンにしがみつく人も多いです。

自分のフトンが恋しい

15〜16時間労働で、睡眠時間は4時間くらいしかとることができませんでした。
週休2日制ですが、月2日休めたらいいほうで、到底、間に合わないスケジュールがはめられ、休んでいると「なまけるつもりか?」といわれます。就職してからの2年間は、朝フラフラで起きて出勤、おなかがすいてたまらないときはマクドを食べて仕事。こんな日々の繰り返しのなかで、自分のフトンが恋しくてたまらなかったです。それ以外のことが考えられなかった状態でした。世間で起きていること、映画をみたいとか、本を読みたいとかの気持ちが一切起こらず、とりあえず寝たいというだけでした。

“うつ”と診断され、正直うれしかった!

2004年2月に原因はわからないのですが、突然「仕事をやめたい、このままでは死んでしまう」と思って、会社に辞表を提出したのですが、上司から「来週、ゆっくり話しよう」と言われ続け辞表受取を拒否されました。

結局、2004年4月から病気休職となりました。病気のきっかけは、仕事中に突然体調が悪くなり、内科を受診。内科的には問題ないが、神経科の受診をうながされました。この受診についても「病院に行きたいから休ませてほしい」と言うのに非常に勇気がいりました。神経科を受診して「重度のうつ病です」といわれたときは、ショックでしたが、同時に正直にいって「これで会社にいかなくていい」と思ったし、素直にうれしかったです。

当時は、会社には行かなくなっても、友だちと会うのも、遊びに行くのも、何をするのも面倒で、楽しいはずの約束が苦痛でノルマをこなすみたいでした。これも「うつ病」だからですが、今は服薬しているため友人と、話ができる、世間話にも参加できるというのは、社会人になってはじめての経験です。

相談できる人もおらず、役立った「市民ガイド」

休み始めの頃は、こんな自分にした会社に強い怒りを覚えました。そんな時家に届いた「市民ガイド」を見て、市役所の法律相談に行きました。怒りをぶつけたり、相談できる人は誰もいなかった時に「市民ガイド」は強い味方でした。

自分で勉強して労働基準監督署に訴えました。そうすると会社は「タイムカード制」を適正に運用(それまでは、虚偽の時刻での打刻を強要されていた)、また水曜日が「ノー残業デー」になりました。しかし、「ノー残業―」も火曜日と木曜日に仕事量が増えるだけで、タイムカードがない派遣社員や非正規社員に仕事がいっそう丸投げされただけでした。

また、それまでは慣習になっていた新人が始業時間前に来て机を拭くことや、花見やスキーツアーの幹事を義務づけられていたのが、廃止になりました。

今、ようやく以前の自分を取り戻したように思います。友人の話にも共感できる気持ちがもてるようになりました。

大阪家電販売協同組合 K事務局長さんにお聞きしました
消費者とともにつくる“まちづくり”

誰にでも役に立つ電気屋さんに

家電製品を買おうとしたら、大半の人は量販店に出向くのではないでしょうか。
家電小売店は量販店と同じような販売では取り付け費用なども捻出できません。小売店としての“売り”は、テレビや冷蔵庫を買ってもらい搬入した時に、門扉のきしみや水道蛇口の水漏れの修理など、相談や取次ぎもしながら、直接利益につながらないけど、地域住民に役立つ電気屋さんになることです。「人との付き合い」を大切にして、元気でやっている小売店が増えています。

特にお年寄りの世帯などは、量販店での買い物は車が必要ですし、購入したハイテク機器の操作が難しい、対応できないなどの問題も多く、やっぱり家に出向いて顔をみながらていねいに使用について説明しています。「気軽に相談に応じてくれる近くの店が便利」「安心できる」という声も聞いています。だれにでも人にやさしいサポート、役立つ店がいきいきと元気にやっています。

量販店の進出に関わって、商調法での話し合いの経験は、全国で初めて

八尾市で大型店のスーパーIが進出するという話が出たときに、小売商業調整特別措置法(略:商調法)を活用し、調査と「大型店との話し合い」を大阪府に申請し、家電商組合とスーパーとの話し合いの結果、「地元小売店に影響及ぼす営業は行なわない」旨の確認ができました。「話合うつもりはない。法律違反していない」という大型店もある一方で、スーパー店は、好意的に話し合いに応じるという姿勢で対応することになりました。小売店業界にとっては画期的な成果です。

後継者問題が大きな課題

全盛期には3000近くあった大阪の家電小売店は、今は3分の2にまで減少しています。そして、大きな問題は「後継者問題」です。10数年前の量販店が乱立の時期に「子どもには継がせることは難しい」と会社員になったりする店が数多くありました。今も現役でがんばっている人の中心は、60歳代です。その人たちが「後継者」がいなく、店を閉めざるを得ない事態に迫られています。

信用できない「価格」、売る商品がない?

大型店は、メーカーとの特約生産、小売店は卸店からの仕入れ、小売店に商品がまわってこないなど、システムが不公正で、公平な競争をさまたげています。

量販店で「店頭での相談あり!」「これ以上の値引きします」などと書いたチラシには、消費者からも「混乱、迷惑」したという苦情も聞いています。「聞いた店員によって価格が違う」、「安さでは、他店に負けません」という表示に期待して店頭に行くと、「話が違う!!」ということもあり、いったいいくらなのか、購入額が安いのか、高いのか全くわからないという価格不信にもなる事態が起こっています。これは、店も消費者も迷惑するのではないでしょうか。

S市 生活と健康を守る会 H事務局長をたずねました
人間性の回復めざした社会連帯を広げる運動を強めた

100万円の借金が、5年間で247万円も返済したのに、残額96万円?

サラ金返済の解決を求めて相談に来られたAさん。「困ったときに、お金を貸してくれたのはサラ金だけだった。だから食費を削り、電気を消して暗い部屋で我慢してサラ金だけは返済してきた」と。

毎月37000円を5年間半返済してきた(247万円)のに借金は減らない。その上新たに「20万円借りて」と一日に何回も電話がかかってくるようになりました。怖くなって『生活と健康を守る会』へ相談に。教えてもらいながら自分で電卓たたいてみたら、法律通りの計算では3年半で借金残高がマイナスになっていたことが判明しました。

サラ金担当者は、からくりを知っていながら、不要な借り入れを押し付けてきていたのです。特定調停を簡易裁判所に申請すると、即、サラ金会社から「ローン残高はありません」と回答がありました。

『生活を健康を守る会』には、「生活保護を受けたい」「サラ金、ヤミ金から不当な請求があるがどうしよう」「突然首切られた」などの相談が何人もの人から寄せられます。なかにはホームレスの人が、「家族の病気でどうしようもなくなった、自己破産したい」など、切羽詰った相談が増えています。

一方で、「ばれなければ大丈夫」というホリエモンらがはびこる今の社会に、フツウに働いて、暮らしていける社会でなくなっていることに憤り、「今こそ、人間性の回復めざした社会連帯をひろげる運動を、組織的にすすめていきたい」と切々と訴えておられました。

生活保護世帯への狙い撃ちは、福祉の魂を奪うもの

S市は、財政難を理由に「福祉・生保を聖域にはできない」といいながら、06年度事業予算で低所得者(生活保護基準の1.2倍の所得世帯)への夏季歳末見舞金を生活保護受給世帯に対してのみ除外しました。

「夏季歳末見舞金」は、04年に大阪府が削減した際に、S市は存続したのですが、今回、「近隣市町村が実施していない」「継続は不適切」と、生保世帯を除外することを強行しました。市との交渉に参加した人たちからは「月末になると生活費がなくなり、近所付き合いができなくなる」「寒いなか灯油も餅も買えない。入浴回数を減らし食費を切り詰めている」「ギリギリの生活をなんとか。病気になると不安」など切迫した声を集中させましたが、行政・市に対して「これが市民のくらしをささえる行政なのか」という不信を強めたことは確かです。福祉の精神・魂を奪うやり方に大きな憤りを感じています。

結果として、見舞金を打ち切られたのは、生保世帯だけでなく、病院・施設入所者も廃止されました。

今回の市交渉では、廃止の理由を追及すると、答弁がコロコロ変わり、何があろうとも「廃止の方向は変えない」という態度に終始し、その対応も誠実さに欠けるものでした。これまで、市当局と市民という立場で、互いに意見や思いを聞いて、国の悪政にどう対応していくかについて市と市民団体との共同で築いてきた関係が、市側からその関係を崩すとともに市民に対しての挑戦をしかけてきたのだと受け止めています。

市民の気持ちになって丁寧な対応をして欲しい

自治体職員には、相談したことにわかりやすく理解できるよう対応して欲しいと思っています。
たとえば、国保の減免申請の相談にいったのに、生活保護課に行くよういわれることがよくあります。職員の方は、減免したとしても保険料が払い続けられるか、世帯全体の生活の見通しを考えての「助言」であったとしても、本人にしてみれば、国保の減免にきたのに、なぜ生活保護に行けと言われるのか、解からないまま、従っています。

ある市では、国保保険料の減免制度があるにも関わらず極端に申請数が少ない、また、申請書そのものがカウンターに備えておらず、奥から古びた用紙を出してくるというところもあります。市民からみれば、非常に不親切で到底、相談してよかったということにはなりません。

また、生活保護の廃止・停止についても、法律上、書面で通知となっているのは承知しているのですが、「書面通知」と同時に生活保護法27条で「指導及び指示」について「保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持・向上、その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる」とともに、「被保護者の自由を尊重し、必要の最小限度に止めなければならない」「被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない」とあるのに、そのような説明や指導がされず、突然の書面通知で対処するのは問題です。そのことを交渉で指摘し、改善させましたが、こんなことも考え、悩みぬいてようやく市役所の相談や行政サービスを受けようと勇気をもって役所に来た市民に、丁寧に対応してもらってこそ、「役所にいってよかった。助けてもらった」という気持ちになるのです。

最近、事務的で強権的な対応が問題になっていますが、市民にとって役所・職員が身近に相談に乗ってくれると思えるような対応をしてもらわなければ、国民・労働者の分断を図ってきている政府の思うツボではないでしょうか。

深刻さを増すばかりの府民の暮らし

◆失業、不安定雇用・非正規社員が激増

◇全国水準を大幅に上回る完全失業者(率)

全国と大阪の完全失業者(率)の推移は、表 の通りですが、大阪府はここ数年増加しています。愛知県は全国を下回る水準で推移し、東京都、神奈川県についても全国水準並みを推移しているのに対し、大阪府は全国よりも高水準で推移しています。

その理由は、大企業が大阪府域から東京・関東域に移転していく傾向が今も続いており、景気回復傾向にあるという東京・関東域に対し、大阪は今の景気低迷傾向が続いていることと関係あります。


主要府県の完全失業率の推移   全国と大阪の完全失業者(率)の推移
 

◇増え続ける非正規労働者を減り続ける正規労働者

パート、アルバイト、派遣、契約社員など非正規雇用の労働者が、全体の32.6%(2005年平均)を占めて過去最高に達し、女性では52.5%にのぼることがわかりました。

非正規労働者がどんどん増えていることが『格差社会』の根本にあり、3人に1人が非正規
特に若者の比率が高いことが将来への不安を募らせています。
大阪では、

雇用者に占めるパート、
アルバイト比率


◆ 大阪府民の生活苦は、全国でも深刻

大阪は、全国のなかでどこよりも生活苦は深刻な実情です。生活保護は全国の倍以上の高率です。生活基盤の弱さを抱える階層の多いことがうかがえます。

授業料の減免も、全国は10人に1人もないのに、大阪は4人に1人以上です。
現在も「社会的格差」が広がっています。


1996年 1999年 2002年 2005年
大阪 生活保護世帯 71,305 87,309 117,553 147,198
11.70 ‰ 14.10 ‰ 19.30 ‰ 23.96 ‰
授業料減免 13,386 17,128 25,258 30,221
8.69 % 12.52 % 20.10 % 25.80 %
企業倒産 1,790 (100) 1,764 (98.5) 2,506 (140.0) 1,380(9月まで)
自殺者数 1,436 (100) 2,377 (165) 2,217 (154)
勤労者家計 450,329 (100) 437,211 (92) 415,637 (93) (2004年)
352,575 (83)
全国 生活保護世帯 613,106 704,055 870,931 (2004年)
7.10 ‰ 7.90 ‰ 9.80 ‰ 11.20 ‰
授業料減免 3.30 % 4.80 % 6.80 %
企業倒産 14,834 (100) 15,352 (104) 19,087 (129)
自殺者数 23,104 (100) 33,048 (143) 32,143 (139)
勤労者家計 488,537 (100) 183,910 (98.4) 452,501 (94.0)
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