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[生活保護] 極めて深刻な福祉事務所

>>自治体職場からの告発レポート

[UpDate:2006/5/13]
II 自治体の職場から
      職場の窓口からみた住民のくらし

[生活保護]
   極めて深刻な福祉事務所
   〜増大する相談に対応しきれない恒常的人員不足〜

●「生活保護の相談窓口」から

  • 「55歳になる弟は、10年前にうつ病で大手の電器メーカーを退職し、その後は定職がなく一人暮らし。昨年末まで姉らが仕送りしていた。近所から弟の様子が変であると姉らに連絡が入り訪問。弟が自宅でリストカットしているところを発見し、救急搬送され、命は助かった。しかし、弟は以前から国民健康保険料が払えず、加入していない。弟は手持ち金もなくなり、医療費が払えず、生活保護をお願いしたい。私たちも少ない年金暮らしで、援助ができない。」と姉から相談。
  • 高すぎる介護保険料の減額の相談にきた高齢者。「彼女は、夫の遺族年金で生活している。しかし、デイサービスなどの費用がかさみ、月2,400円の介護保険料の支払いができないと困り果て相談。介護保険課では、減額の対象にならないと生活福祉課に。生活保護の相談するも却下になったが、介護保険料が月1,600円に減額され、ホッと安心した顔で帰られた。」
  • 夫がタクシー運転手で収入が大幅にダウン。「心療内科に通院する妻と高校生と保育園の子どもの4人家族であるが、家賃が高く、借金もあり、公共料金も滞納している。電気代の納付ができなければ明日、ストップすると通知があった。生活に困り、妻は離婚も考えていると話す。」
  • 障害者自立支援法での負担ができないと、グループホームに入所中の息子のことで相談にきた70歳の母親。「知的障害の息子とは以前同居していたが、私が高齢となり、息子はグループホームへ入所。現在は、本人の年金と作業所の工賃で生活している。しかし、4月から自立支援法で自己負担が求められるとホームでの生活ができない。」と生活保護の相談に。
  • 短い期間の雇用保険が終わり、生活ができないと相談。「56歳の男性。勤務中のケガで労災年金を受給。妻と成人した子どもはいるが、無職。2年前に不況で40年間勤務した会社が倒産。退職金はすぐになくなり、雇用保険も終わり、生活に困っている。現在もハローワークに通うが、下肢に障害があり、不採用が続く。」
小泉「構造改革」政治により、医療保険制度、介護保険料の大幅値上げ、障害福祉制度などが改悪され、国民生活を守る「社会保障制度」が破壊されてきています。今後、さらに大増税や国民負担が増え続けるもとで、くらしに困り、生活保護の相談に訪れる市民は、ますます多くなることが予想されます。

● 増大する生活保護世帯…貧困化がすすむ

生活保護世帯は、全国で100万世帯を突破し1,048,661世帯(2005年11月)に達しています。保護率では、1995年度の88.2万人、7‰を底として、2004年度の142.3万人、保護率は11.1‰と上昇しています。また、生活保護受給者の増加率は、2005年度で5.9%になっています。

大阪では、2006年1月現在で、生活保護受給者が217,248人で保護率は24.63‰です。府下でも、大阪市が40.37‰、門真市39.98‰、東大阪市30.53‰、枚方市30.51‰と続きます。まさに、この状況は、大阪が全国で最も経済的にも疲弊し、社会的にも貧困化の進行した地域であることを示しています。(表)

● 福祉制度を支えるケースワーカーが必要

生活に困っている人たちを支え、相談し援助するのが、ケースワーカーです。厚生労働省の定める標準定数(都市部でケースワーカー1人の担当は80ケースと決められている)では2005年度の大阪市を含む府下全域で1,674人必要ですが、ケースワーカーは1,092人となっています。充足率は65%です。とくに、大阪市では、必要とされるワーカーの標準数は847人とされていますが、現業員の配置は471人に止まっています。このため、大阪市は、訪問調査の嘱託員を150人雇用し、被保護者宅への訪問をするなど不足するケースワーカーの役割を補っています。

また、H市でも、S市でも嘱託やアルバイトを雇用して補っています。しかし、生活に困っている人の生活を、どう立て直すのかは、職場での対応は、社会の変化の中で複雑になり、より困難になっています。ケースワーカーが、日常の信頼関係を基礎に、丁寧な働きかけを行なうことが求められています。全国的にみても、大阪のようなケースワーカーの欠員状態は異常であり、極めて深刻な状況です。

● 政府が自治体に「生活保護抑制策」を指導


生活保護制度は、憲法にもとづき、国が全ての国民に最低限度の生活を保障する制度です。厚生労働省は、「三位一体改革」で生活保護費の国庫負担金を減らし、地方自治体に負担を転嫁することを画策しましたが、自治体側からの猛反対を受け、今後の検討課題として先送りしました。

こうしたなかで、厚生労働省は、地方自治体にさらに新たな被保護人員の抑制策を徹底するよう求めています。2006年度からは、厚生労働省が通知した「適正に運用する手引(案)」を活用し、さらに厳しい「保護の適正化」政策を推進するよう指導しています。この手引(案)は、1981年の「123号通知」をさらに強化し、資産調査や稼働能力があるとした人への指導指示などの方法を明示し、保護の打ち切りも含めた検討をするよう指示しています。こうしたなかで以前より、保護の申請を受理しない自治体や生活保護の相談窓口に警察OBを配置して対応するなど、生活保護制度の申請する権利を侵害する自治体が一部とはいえ生まれています。

● 守ろう国民の生存権保障、打ち破ろう格差社会

日本国憲法第25条は「国民の生存権保障」を宣言し、世界にも誇り得る憲法です。そして、この憲法25条を土台に生活保護法があり、国民の生存権が具体化され、保障されています。「構造改革」「小さな政府」のもとで、「弱肉強食」「格差拡大」の社会が広がり、「生きていくこと」そのものがたいへんな状況が生み出されています。私たちは改めて、憲法25条の原点にたち返り、自治体職場から住民のくらしを守る仕事をつくることに奮闘していきたいと思っています。

先日、ある高齢のご婦人から福祉事務所に届いた一通のお手紙を紹介します。この女性は、電話で「私は年金がなく、貯えも底をつきました。72歳まで長生きするとは思わず、働いていた時に貯えたお金も残7万円程になりました。この私が、生活保護を利用できるのでしょうか。」と問い合わせてこられました。

「前略ごめん下さい。先日電話しましたものです。思い切ってかけさせて頂きましたが、緊張で声がふるえ涙声になりました事恥じておりお詫び申し上げます。大変優しく接してくださいまして勇気がでてきました。私のような昔人間は大事な国民の税金をとついついしり込み致していましたが優しくお話を聞いて下さったこと心より感謝し、生きる力を得ました。やっかいな狭窄症で歩行困難ですが、当日はいざという時に大事にしていた痛み止めのとんぷくを飲み必ず伺います。4月早々と考えております。お手紙にて感謝を申し上げます。ありがとうございました。」

“就労支援”に独自の努力 〜住民と心かよう福祉事務所に〜

京都府のY地域の福祉事務所は、母子家庭など仕事を探している世帯への丁寧な「就労支援活動」が多くの成果を納め、全国でも注目を集めています。この福祉事務所は、2004年度では3人のケースワーカーが200世帯を担当し、仕事を探している被保護者47名のうち27人が仕事を得て、その内11名が自立したと報告されています。

援助の内容も、就職相談会や職業訓練事業の参加などを案内し、自立支援員(嘱託)なども活用し、就職した経験もニュースで交流し、仕事への意欲を高め、保護からの自立をめざした取り組みが積極的に取り組まれています。

大阪でもこの取り組みから大いに学び、被保護者との信頼関係を築き、住民と心の通う福祉事務所を実現しようと頑張っています。

※保護率は、2006年1月現在  標準数・配置数は2005年4月現在の状況
 査察指導員会議での大阪府社会援護課資料より作成
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