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大阪自治労連が「小さな政府」「大きな国民負担」を考えるシンポジウムを開催 [2006.2.27]

大阪自治労連が「小さな政府」「大きな国民負担」を考えるシンポジウムを開催

自治労連・自治体「構造改革」対策委員会

小泉「構造改革」のもと、「小さな政府」「官から民へ」の大号令を叫ぶ政府・財界。国民と公務員労働者の分断をはかる公務員バッシング。こうした動きのなかで、2月12日、大阪市内のOMMビル大会議室で、「小さな政府・大きな国民負担」を考えるシンポジウムが開かれました。

このシンポジウムは大阪自治労連が主催し、大阪社会保障推進協議会、大阪労連が共催したもので、市民、自治体労働者、民間労働者、住民団体、研究者、地方議員など会場いっぱいの約180人が参加しました。

「小さな政府は住民の生活に何をもたらすか」のテーマで講演した、金澤誠一さん(佛教大学教授・労働運動総合研究所理事)は、戦後日本の、高度経済成長期から低成長期にかけての生活様式の特徴を詳しく示し、家計収入が低迷から減少に転じていること、国民の中に収入格差が広がっていること、家計支出に占める「生活基盤」・社会保障・社会福祉関連費目が急激に上昇していること、いくらまじめに働いても貧困状態から抜け出せないワーキングプアが増大していることを指摘。

貧困化は「孤立化」を生み出し、社会の様々な人間関係からも遠ざけられる「社会的排除」という深刻な状況がつくりだされていると指摘しました。こうした事態をもたらす「小さな政府」路線に対して、憲法25条にもとづくナショナルミニマムの確立、人間らしい生活ができる最低生計費や最低賃金の確立をめざして、リビングウェッジや公契約運動など、社会的な連帯と共同を広げて運動を広げていくことが大事であると強調しました。

報告では、中原将太さん(富士通勤務)が、IT関連企業にはたらく青年の労働実態について発言。「朝8時から夜中の12時までの長時間労働、睡眠はたったの4時間。こんな生活が2年間続いてうつ病になった。まさに使い捨ての部品と同じ。これではダメと提訴してたたかっていく」と決意を表明しました。

秋吉澄子さん(全大阪生活と健康を守る会)は「生活保護世帯が全国で増加している一方、政府は、保護費が年金支給額よりも高いと生活保護世帯と年金生活者を分断させる攻撃をしかけている。保護費は老齢加算、母子加算を廃止し水準をさらに低下させている。あまりにも低すぎる年金を引き上げることをはじめ、健康で文化的生活がおくれる制度の確立がどうしても必要」と訴えました。

自治体の税務労働者の立場で報告した吉岡敬さん(高槻市労組書記次長)は「政府は高額所得者には税率の緩和、低額所得者や社会的弱者に対しては増税になる政策をすすめてきた。今年度の府・市民税は老年者に対する課税の強化、定率減税の半減で申告時期は大変多くの来庁者、相談が殺到すると予測される。税制改悪は福祉など他の施策の負担増にも連動する。市当局に対して『住民に負担増になることを行政として知らせるべきだ』と求めても、知らせようとしていない。この上、消費税率が引き上げられれば大変な庶民大増税になる。大増税計画を住民に知らせ、たたかう」と報告しました。

市内の住民団体を訪問、「市政白書」をつくるまちづくり運動を展開(松原市職労)

報告を受け、「構造改革の対抗軸を探る」というテーマで開催したシンポジウムでは金澤誠一さんをコーディネーターに、吉田雅一さん(読売テレビ労組・民放労連近畿地連書記長)、大原真さん(松原市職労委員長)、中山徹さん(大阪府立大学教授)の3人のパネラーが登壇。

「報道現場では、番組を制作するスタッフのほとんどは外部の人材。局で働く労働者の賃金は年俸制で成果主義。すべては視聴率獲得のために追い回されている。昨年の総選挙では、小泉改革に国民の期待感をあおる報道・番組が続いた。いまのマスコミは悪だが、記者や報道関係者のすべてが悪いのではない。内部で矛盾を感じている人もたくさんいる。マスコミの報道を少しでも国民の立場に近づけるために、記者などとの人間的な結びつきや信頼関係をつくりあげることも大事にしてほしい」(吉田)、「市内の住民団体を訪問してヒアリングを行い、市政白書をつくる第3次まちづくり運動を展開してきた。断られる団体もあるだろうと思っていたが、要請したほとんどの団体が応じてくれた。

『市役所の労働組合が、こんなことをしているのか』と驚く人もいた。まだまだ試行錯誤だが、住民の中にとびこめば、共同の運動は必ず広がる」(大原)、「全国一の生活保護世帯を抱えるのが大阪市。国と自治体の責任は大きい。落ちこぼれを網にひっかけるようなセーフティネットではなく、トランポリンのように上へ跳ね上げる、元気の出るセーフティネットを再構築することが必要だ」(中山)と、各パネラーがそれぞれの立場から発言しました。

参加者からは「住民には『公務員の賃下げ、削減やめよ』という主張は受け入れられないのではないか・・・」「そうではない。公務員を減らしたり賃金を下げることが、どれだけ住民に重大な影響を与えるのかを考え、もっと知らせるべきだ」「公務員バッシングや公務員の『厚遇』キャンペーンで小泉改革をあおるマスコミの責任は重い。

これでは労働者の賃上げさえ『厚遇』といって非難されかねない」「松原市職労のように、自治体労働組合が住民の中に入って実態をつかみ、『市政白書』にまとめていくとりくみはたいへん大事だと思う」「格差や分断を許さず、ナショナルミニマムを確立するためには、憲法9条とともに25条を守ることもあわせて、大きな運動をつくることが大切だ」など、活発で白熱した発言が続きました。

最後に、主催者あいさつに立った谷真琴・大阪自治労連委員長は「いまの日本の社会状況である『格差社会』をどう見つめるのか、自治体が果たすべき役割は何か、小泉改革が進める『小さな政府』でいいのか!と声をあげて問いたい。そんな思いで今日のシンポジウムを開催した。

格差や分断をのりこえ、国民の団結、共同を広げて運動をすすめていこう」と訴えました。参加者からは「構造改革に社会的連帯で対抗することが大事だとわかった」「民間企業や市民の実態が聞けてよかった」「公務員攻撃の本質を真剣に考えなければならない」「討論する時間が足りなかった。このテーマはもっと時間をかけて議論すべき」「こんなシンポジウムを府下各地で開いてほしい」などの感想が寄せられました。
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