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機関紙-自治体のなかま-

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「指定管理者制度」をめぐる情勢と、住民・利用者本位の施設運営を求める当面のとりくみについて-[2006.2.24]

「指定管理者制度」をめぐる情勢と、
 住民・利用者本位の施設運営を求める
 当面のとりくみについて

2005年7月7日 大阪自治労連 指定管理者制度闘争交流集会への報告

1.指定管理者制度をめぐる情勢と、この間の各単組・地域の運動・とりくみについて

(1)指定管理者制度とは・・・住民の財産・公共施設の管理運営を、特定の営利企業が独占し、金もうけの道具に使えるようにする制度

 指定管理者制度とは、住民の財産である「公の施設」の管理運営を、特定の営利企業が独占し、金もうけの道具に使えるようにする制度です。指定管理者制度が導入されれば、施設を利用するための許可権限、利用料金の設定、施設のサービスの内容に至るまで、新たに指定管理者となる団体・企業が、かなりの「自由度」をもって決められるようになります。自治体や住民、利用者からの意見反映や関わりは大きく制約されます。

 「公の施設」は何よりも主権者である住民・利用者の施設利用権が保障されることを基本に運営されなければなりませんが、指定管理者制度が導入されたことについては、ほとんど住民・利用者に知らされていません。

 指定管理者制度の導入で、にわかに「活気」づいているのは財界や民間大手企業です。日経BP社は、小泉内閣が国や自治体の公共業務を民間に開放することをうちだしたのを受けて、企業に情報を提供するための刊行誌「パブリックビジネス・リポート」を創刊。民間開放・規制改革で新たに50兆円の市場が創出されるとして、民間営利企業の新規参入をあおっています。

同誌では指定管理者制度で2兆円の市場が出現するという三菱総合研究所の試算も引用して、各企業に「攻め方」を指南しています。全国展開する大手企業(スポーツ・教育産業、大手ゼネコン、ビルメンテンナンスなど)が、全国の公共施設を新たなもうけの対象にして、指定管理者を受ける例が広がっています。

 国は、各自治体で定める指定管理者制度の条例の「目的」に、施設の「管理コスト縮減」をかかげることをおしつけています。住民・利用者へのサービスよりも、コスト削減が優先されることにより、指定管理者制度が導入されたところで様々な問題が生まれています。

指定管理者を公募しても「利益が見込めない」として、どの企業からも応募がなかった場合には、施設そのものを廃止(大阪市・南港の海水浴場)するところもあらわれています。東京都のスポーツ施設では、指定管理者制度が導入されたことにより、アマチュア団体等に保障されていた減免制度が廃止される事態も生まれています。

指定管理者となった企業が、途中で「儲からないから」と指定管理者を返上してしまい、施設の運営に混乱がもたらされるケースも生まれています。コスト削減により、指定管理者となった企業やNPOでは、人件費を削減するために低賃金のパートやボランティアが施設の運営を担っています。しかし、働き続けられる労働条件ではないために職員が短期間のうちに入れ替わり、施設の運営に関わる専門性が蓄積されず、継続した施設運営にも支障が生まれています。

一方、これまで管理運営をしてきた外郭団体等の法人が、指定管理者に選定されなかった場合に、施設で働いていた職員が解雇されるなどの問題も生まれています。

 そもそも「公の施設」は、金もうけのためでなく、「住民の福祉の増進を図る」(地方自治法)ことを目的に設立された施設です。福祉施設、公民館、文化施設、図書館、美術館、スポーツ施設など、どの施設も住民・利用者には平等にサービスを提供し、無料、低廉な料金で運営しており、収益をあげることを前提にした運営はしていません。

もともと、収益あげることを想定していない「公の施設」の管理運営を、民間の営利企業に「ビジネスチャンスだ」として提供すること自体に大きな矛盾と問題点があります。自治体からの委託料金が縮減された中で、指定管理者となって収益をあげようとすれば、利用料金を値上げする。多額の料金が払える一部の金持ちを優先する利用制度にする。人件費を削減するために施設職員は低賃金のパート労働者に置き換えることになります。

このことによって、利用者の負担が増えたり、施設の公正な利用が一部の金持ちを優先する運営に歪められたり、施設職員の専門性が低下してサービス水準が劣化することなどが予想されます。指定管理者となる企業は、住民の税金で建て、借金も税金で返済している公共施設を自由に管理運営して私的利潤を追求することができます。設備投資なしでもうけられる、これほど企業にとって「うまい話」はありません。

このような問題をもっている指定管理者制度を、自治体でどう扱うかについて自治体当局は、国や企業の言いなりではなく、住民・利用者、当該の自治体労働組合、外郭団体職員の要求・意見をふまえて対応することが求められます。

(2)住民・利用者も知らないうちに「条例化」「公募」「指定」。労使交渉なしに強行する動きも。

ところが、現在の大阪府下各自治体の状況をみれば、住民や利用者、自治体労働組合から事前に情報をつかみ、事前に意識的に働きかけなければ、一方的に条例化・制度化される事態も生まれています。

今後、各自治体とも大いに警戒が必要です。今年に入って3月議会から6月議会までの間に、府下自治体の一連の「公の施設」で、指定管理者制度の導入・手続き条例を定める動きが急速にあらわれています。東大阪市では市の福祉、文化、スポーツ施設、斎場など30数施設の指定管理者制度導入・手続き条例が議会に提案。公募・非公募はすべて規則に委ね、施設ごとの公募・非公募の扱いは不明の状態にあります。

また寝屋川市では直営施設である老人センターを、労使協議もなしに一方的に指定管理者制度を導入すること議会に提案しています。指定管理者制度の導入は、住民や利用者に事前の説明もせず、職場では労使協議の対象にもせず、一方的な判断で実施する「管理運営事項」という扱いで進めようとしている当局も少なくありません。大阪府、大阪市では、住民が知らないうちに今年4月からスポーツ施設等が民間大手企業を指定管理者に指定しています。

衛星都市自治体でも、大阪狭山市、四条畷市などで一連の施設について公募を行っています。住民・利用者からの意識的な働きかけ、職場での労働組合からの交渉の申し入れをしなければ、各自治体とも労組、住民を無視して一方的に条例化、公募をすすめる状況にあります。今後、一方的な実施をさせないために、あらゆる方法で自治体当局に働きかけていくことが急務となっています。

(3)委託している施設だけでなく、これまで直営で運営してきた施設までいきなり指定管理者に指定する動き―大東市、寝屋川市

 指定管理者制度の対象となっている施設は、現在、委託をしている施設だけに限りません。これまで直営であった施設を、いきなり指定管理者制度にする動きも現れています。 

 大東市では2006年4月に新設する公立図書館を指定管理者にすることで公募を開始。大阪府下の公立図書館で初めての導入をはかろうとしています。これには、全国の公立図書館の指定管理者をねらっている図書館業務の大手企業(株)TRCが指定管理者になるとの噂もあります。利用者でつくる「会」は、住民宣伝ビラをつくり、指定管理者制度の問題点を知らせて運動をすすめています。

 寝屋川市の直営施設・障害者授産施設「北斗すばる作業所」は、2006年4月より、保護者らでつくる社会福祉法人(新設)を指定管理者に指定する方針をうちだしました。同市ではこれに続き、市の老人センター4施設のうち2施設(1箇所は公社委託、もう1箇所は直営)を指定管理者にする条例を6月の議会に提案しています。職員の雇用にも関わる重大な問題であるにも関わらず、事前の労使協議・交渉もなしに一方的に当局が議会に提案をしています。寝屋川市職労は直ちに当局に抗議をして、職員の労働条件に関わる事項は労使交渉で扱うように求めて闘っています。

 一方、住民や利用者団体、労働組合側から積極的な労使交渉をすすめているところでは、直営の施設について「指定管理者制度の導入は現在のところ考えていない」とする回答を引き出している単組もあらわれています(守口市など)。直営施設は、指定管理者制度を期限までに導入しなければならない根拠はまったくありません。労働組合、住民団体が積極的に働きかけ、当局に直営施設は指定管理者制度導入をさせないように、おさえておく必要があります。

(4)指定管理者を選定する「公募」「非公募」をめぐって

指定管理者の選定は、公募で選んでも非公募で指定してもよいことになっていますが、多くの自治体では「原則公募」とすることを打ち出しています。しかし、公募された場合、「管理経費の縮減」が大前提とされる限り、競争入札と同じように事実上のコスト削減競争となります。現在の外郭団体が管理運営するのと、民間の営利企業が運営するのとでは、人件費の価格が半分以下まで下げられる事例もあります。

専門性やサービス水準の確保を無視した超低価格で申し込んだ企業が指定管理者となる可能性もあります。公募の結果、これまで管理運営をしてきた外郭団体法人が指定管理者に選ばれたとしても大規模なリストラが行われ、サービス、専門性の低下が強いられます。コスト削減を競い合うような「公募」はさせないようにすることが必要です。

また、公募しなかった場合であっても、「解同」などの特定団体や、議員やその親族が経営する法人が不明朗な形で指定管理者となる場合もあります。あらためて、選定にあたっての民主的な基準・ルールを確立しておくことが必要です。

 吹田市では、指定管理者制度の導入にあたり、現在外郭団体等に委託している施設については、公募をせずに現行の委託法人を指定する方針を固めています。吹田市の措置は、制度発足の時点でいきなり現行の外郭団体がはずされ、住民サービスが大きく変動したり、職員の雇用が脅かされる事態は当面回避できるものとなっています。

吹田市では、議会からは激しい「指定管理者制度早期導入」「民間企業の導入」の圧力がある中で、施設のサービス水準と現行の委託法人で働く職員の雇用を守る立場で、これまで十数回にわたる学習会、住民宣伝、シンポジウムなどのとりくみを進めてきました。この運動の力が、当局をして拙速に「外郭団体はずし」をさせない姿勢をとらせています。

今年1月に発表した吹田市の「運営指針」による組合への説明では、「市が公の施設を管理するために設立した外郭団体及び社会福祉協議会による管理運営が行われている場合、介護保健サービス施設であり、公募により選定された社会福祉法人に対し管理運営が現に行われている場合、その他合理的な理由がある場合は当分の間公募しないことができる」と独自に「公募しない場合」の基準を示しています。

各単組でも、現在、外郭団体・出資法人に委託している施設については「公募せずに指定せよ」と要求していますが、「公募・非公募は各部局で判断。非公募の場合、議会に説明するのがむつかしい」(東大阪市)など現行の法人を公募なしで指定させる方針は固めきれていません。

当局自身が、自ら運営に関わってきた出資法人に対する設立者としての責任を感じておらず、一般の民間会社と同等のレベルで出資法人をとらえている問題もあります。出資法人を設立してきた経過、法人職員に対する市としての雇用者責任を追及する必要があります。

2.市民・利用者・地域労連と共同した運動について―大阪府下各地で住民の立場に立った闘いが。

(1)住民・利用者による運動が、新たに広がりつつある。

 指定管理者制度問題で利用者、住民との共同も始まっています。大東市職労は、図書館の指定管理者制度導入に対し、市民とともに「図書館を考える会」を結成。住民宣伝や市教育委員会に対する共同の申し入れ、交渉をすすめています。

昨年、堺市で図書館の指定管理者制度導入をきっかけに起こった利用者・市職労の共同の経験(運動の力で短期間のうちに11.000人の反対署名を提出。当局が当初もくろんでいた2005年4月からの実施は断念させ、直営で開設させる)が引き継がれています。富田林では市長選挙の母体となった「会」や、「生活と健康を守る会」で、今年に入ってから数度の指定管理者制度の学習会を実施。住民宣伝、懇談をはじめ、市当局に働きかける方針を確立しました。

6月4日(土)には指定管理者制度での市民学習集会を開催。市内の文化人らを代表にすえて、「公の施設を考える住民懇談会」を結成。今後は行政区ぐるみの運動に発展させていこうととりくんでいます。吹田市労連も、昨年から数次にわたって、指定管理者制度をめぐり利用者との懇談、学習会をすすめ、シンポジウムも成功させています。これらの共同のとりくみが、吹田市当局に対して、施設の民間営利法人丸投げをさせない力を作り出しています。府立ドーンセンターをはじめとした「女性センター」についても、大阪自治研集会男女平等部会の主催で5月28日に学習集会を開催し、女性団体が共同で大阪府に申し入れるなどのとりくみが進められています。

 スポーツ施設については新日本スポーツ連盟大阪府連と大阪自治労連・府職労、大阪市労組が共同で大阪府に対する共同の要求書を作成。大阪府と7月7日に懇談を行いました。新日本スポーツ連盟の総会などでも、指定管理者制度の問題について学習会を開催します。

(2)「公の施設」の外郭団体の職員・労働組合と共同をすすめる

「公の施設」に働く労働者、労働組合と共同したとりくみもすすめられています。府職労と青少年会館の労働組合(総評全国一般)が上部団体の違いを超えて共同し、4月27日に利用者団体を対象に指定管理者制度説明会を開催ました。

この説明会には地域のバレエ教室、私立高校の文化祭担当教諭、大阪市立大学、公立高校のブラスバンド部、劇団など約20人が参加。組合より指定管理者制度の問題点と、これからの大阪府の動きについて説明して懇談しました。利用者からは「これまでどおり、施設の人にはちゃんと対応してもらえるのか・・」という不安の声があいつぎ、「結局、今まで施設を管理運営してきた財団が指定管理者になるのが一番いい」というのが大方の意見になりました。利用者からは「私たちは何をすればいいのか」という質問まで出され、組合からは、「これから署名や法人、府への要請などを検討しています。利用者からも直接、法人に声をあげてほしい」と訴えています。

大阪労連市内地区協議会も昨年、いち早く大阪市内の全施設(270箇所)を訪問しました。吹田市労連が外郭団体の労働組合によびかけ、市民とともに連続学習会を開催しています。この中で、指定管理者制度の対象となる児童館で、新たに労働組合をつくるための相談が進められています。

 全国では、広島自治労連が指定管理者制度をきっかけに、市の外郭団体に複数の労働組合を新たに組織化し、広島市職労とともに広島市当局との直接交渉も実現させています。真っ先に雇用が脅かされる外郭団体職員に対する働きかけ、労働組合への組織化とあわせて、早急にこの分野のとりくみを強化する必要があります。

(3)指定管理者制度問題で攻勢的に当局に要求書を提出し、労使交渉で前進的回答も引き出す。

 大阪自治労連として、労使間でも指定管理者制度問題を正面に据えた交渉を進めていく必要があります。これまで労使交渉を取り組んできた労働組合では、国の方針で一方的に指定管理者制度を実施させないための様々な「歯止め」をかちとっています。

具体的には「現在、管理委託している法人を当面、公募なしで指定する。直営施設は「導入を考えていない」と回答引き出す(守口市職労)。秋の賃金闘争時に独自に交渉。「現行のサービス水準は低下させない」ことを確認(岸和田市職労)。大阪自治労連の基本要求をもとに指定管理者制度での要求を市に提出し、交渉を求める(門真市職労、高槻市労組)。直営施設について「指定管理者制度導入は考えていない」と回答引き出す(守口市職労)。体育施設の指定管理者制度導入をめぐって、体育協会や社協など外郭団体職員の雇用問題で交渉。法人当局は「何が何でも指定を受けるよう全力をあげる」と回答(枚方市職労)。外郭団体職員の雇用問題を中心に当局に申し入れて交渉(和泉市職労)などがあげられます。

学童保育も、堺市や大東市で導入が検討されており、大阪自治労連学童保育労働組合は6月20日に指定管理者制度と学童保育について学習会を開催しました。指定管理者制度を管理運営事項とさせるのでなく、職員の賃金・労働条件に直結する問題として、全単組で基本要求をもとに交渉を進める必要があります。

3.指定管理者制度で、営利法人への丸投げを許さないために―今後、重視して取り組むべき課題

(1)こちらから働きかけなければ一方的に強行される。交渉を申し入れ、攻勢的に対応する。

 「当局の表だった動きがない」「当局から申入れがない」「情報が入らない」として、組合からの主体的な対応を行わなければ、自治体当局は「管理運営事項」として、一方的に条例化・公募をされます。攻勢的に組合から当局に要求書を提出し、実現・改善を迫ることが求められます。

(2)住民、利用者への働きかけ、共同を強める。

  指定管理者制度の問題は、まだまだ住民や利用者には伝わっていません。一方、制度の問題を知った住民・利用者の立ち上がりは早いのが特徴です。職場だけの闘いにせず、大胆に住民・利用者にうってでるとりくみに力を入れましょう。大阪府青少年会館のとりくみ、吹田市労連による地域への共同の働きかけ、富田林の行政区ぐるみの運動など、各単組・自治体での経験を大いに普及し、生かしましょう。各行政区単位でも、新日本スポーツ連盟、新婦人、福祉保育労など関連する民主団体、労組とも本部・地域レベルで共同を進めましょう。

(3)外郭団体の未組織労働者を組織し、共同する。

 外郭団体の職員はかつてない雇用不安に脅かされています。しかし、「公の施設」を管理運営している「外郭団体」に労働組合を十分に組織できていません。あらためて、指定管理者制度が自治体全体の民間化・民営化の突破口にされていること、外郭団体の労働者の雇用・賃金を守り改善することなしには、自治体の正規職員の賃金・労働条件はコスト削減競争で劣悪化することを認識し、外郭団体の労働者の組織化に全力をあげましょう。組織化は地域労連と協力してすすめましょう。
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4.すべての施設で「.政策と要求」を確立し、住民・利用者とともに自治体当局と交渉を進めよう。

(1)利用者・住民団体との交渉・話し合いに応じ、意見を聞いて取り扱うことを確認させる。

指定管理者制度のあり方は、住民・利用者の意見、声を聞くことを基本に据えて取り扱わせるべきです。自治体当局内部、議会だけで決めさせてはなりません。
 当面、9月議会に向けて次のとりくみをすすめましょう。

  1. 住民・利用者団体へ申入れ、自治体当局に要求書を提出し、要請・交渉を実施しましょう。
  2. 共同で学習・懇談会、集会を開催し、施設運営についての要求を結集しましょう。
  3. 指定管理者制度の問題点を大量宣伝で広く住民に知らせましょう。
  4. 施設ごとに自治体当局や議会に対する署名運動などをすすめましょう。

(2)指定管理者制度は管理運営事項でなく、労使交渉の対象として取り扱わせる。

自治体内の労使間においても、指定管理者制度は管理運営事項とさせるのでなく、労働条件に関わる重大な問題として位置付けさせ、労使交渉をつくし、労使合意で取り扱わせましょう。

5..施設ごとに「政策と要求」を確立し、住民とともに自治体当局と交渉を進めましょう。

当面、自治体当局に対し、以下の基本要求・獲得目標をもとに、宣伝、懇談、申入れ、交渉を進めましょう。

(1)直営の施設は直営を守らせる。

現在直営の施設は、指定管理者制度を導入する必要はありません。委託をしている施設とは違い、2006年までの期限で結論をもつ必要もありません。これまで施設を直営で実施してきた意義をふまえ、直営を守らせましょう。

ただし「直営を、現行の運営のままで維持する」という立場では、「開館時間の延長」など「住民サービスを向上させる」という装いをもった推進勢力の攻撃に対抗できません。あらためて住民・利用者の立場に立った施設運営の点検を行いましょう。営利法人による指定管理者制度では実現できず、直営でこそできる住民サービスを明らかにして闘うことが大切です。

住民や利用者のために必要であれば「直営でもできる開館時間の延長政策」「施設運営の充実政策」など、改善要求と政策を住民・労働組合の側から積極的に提起していくことが必要です。

(2)現行の外郭団体に委託している法人は、現行の法人を指定し事業継続を行う。

これまで施設の管理運営を担ってきた外郭団体等の法人は、施設の運営について専門性をもった職員がいること、営利目的ではなく、公益目的のために設立・運営している法人であること、設立者である自治体からの公的な規制・コントロールが一般の民間団体よりもききやすい、という点で、他の一般の法人・企業とは異なる「公共性」を持っています。

国の方針では、この法人も、一般の営利企業とコストで競わせるために「公募」で行うことを打ち出していますが、コスト削減を基準に公募で競争されれば、「安上がりの労働力」を使う営利企業に管理運営が丸投げされることにもなりかねません。これまで、施設の運営について実績のある外郭団体を、そのまま指定管理者に指定することも現行法のもとで十分にできます。

 但し、この場合も「守り」の闘いでなく、住民・利用者の要求を積極的にかかげて、一般の民間企業ではできない、外郭団体だからこそできる優位性を政策的にもうちだすことが大切です。また、一部の外郭団体に対する住民の批判(天下り、不明朗会計など)にも率直に小耳を傾け、是正すべき点があれば、是正する立場で外郭団体法人の民主的改革提案も行う事が必要です。また、外郭団体の職員の雇用問題でもあるので、労働組合全体の力を結集してとりくんでいかなければなりません。

(3)指定管理者制度は、国の基準でなく、住民の立場にたった民主的な規制をかける。

指定管理者制度の条例化、施設ごとの新たな運営基準の確立にあたっては、営利企業に管理運営が丸投げされないように、以下の内容で歯止めとなる措置をとらせていくことが必要です。

  1. 施設の設置目的をふまえ、住民サービスを維持・向上できる法人を選定すること。
    原則として、これまで施設の管理運営を担ってきた法人を公募せずに指定管理者とすること。
  2. 外郭団体職員の賃金・労働条件の低下を許さず、雇用保障をはかる。
    原則として現行の法人を公募なしで指定させる。指定管理者制度を口実にしたリストラ(賃下げ、不安定雇用化、解雇など)を許さない。組合への組織化とあわせて対応をはかる。
    力関係上、公募で他の法人に指定管理者が入れ替わった場合でも、従前働いていた労働者の雇用を指定管理者となる法人が引き継ぐようにさせる。
  3. 指定管理者制度の条例、規則化にあたって設けるべき「民主的な基準と手続き」を下記の内容をもとに、条例・規則・要綱・指針などに盛り込ませる。議会答弁、交渉での回答でも引き出す。

(※自治労連指定管理者制度対策委員会の提起をもとに作成)。

※今後は、自治体と指定管理者との協定書に盛り込ませる基準案を自治労連として作成し、提起する。


  1. 福祉の向上、住民の平等利用、利用者の人権保障などの目的を明確にすること。
  2. 「公の施設」の管理運営を代行させるにあたって、実績、専門性、サービスの質、継続  性、安定性の確保などを明確にすること。
  3. 「管理経費の縮減」は、改正自治法にも明記しておらず、条例等に規定させないこと。
  4. 個人情報保護条例の適用を明記すること。自治体と指定管理者との協定等にも盛り込むこと
  5. 情報公開条例の適用を明記すること。自治体と指定管理者との協定等にも盛り込むこと。
  6. 施設運営への利用者・住民参加・運営委員会の設置、チェックシステムを規定すること。
  7. 自治体による定期的な報告、調査、結果にもとづく必要な改善指示などを規定すること。
  8. 利用料の範囲、算定方法、上限の適正化、減免規定などを位置付けさせること。
  9. 法令(労働基準法・労働組合法をふくむ)・条例の遵守を明記すること。
  10. 首長や議員、その関係者、特定団体等が経営する会社・法人の参入を規制すること。
  11. 指定管理者制度への移行または期間満了に伴う再指定で、継続して指定が受けられなかった法人の労働者の雇用を保障すること。
  12. 当該施設に関わる事業効果が客観的、明確に期待できる場合は、公募によらず現行の受託 者を管理者として指定できるようにすること。特定の団体への便宜提供や癒着を排すること。
  13. 施設の種類によっては、申請団体を社会福祉法人など公的団体に限定し、営利法人の参加を認めないこと。
  14. 「公の施設」の業務を担うのにふさわしい職員の身分、賃金、労働条件等を確保すること
  15. 指定管理者の選定にあたっては、選定委員会を設置し、委員には利用者、住民代表、労働 組合、専門家、弁護士、公認会計士などを入れること。

以上
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