第15回大阪地方自治研究集会 基調報告 [2006.2.27]
[UpDate:2006/2/27] | |
第15回大阪地方自治研究集会 基調報告
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〜目次〜 |
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1.ホンマにええの?「民営化」・・・今年の自治研集会のテーマについて今年の大阪地方自治研究集会のテーマは、「ホンマにええの?『民営化』」と問題提起をしています。 小泉内閣は、「官から民へ」「小さな政府」「郵政民営化をあらゆる改革の突破口にする」として、国・自治体全般の業務まで「民営化」をおしすすめようとしています。「民営化」は1980年代の臨調・行革以来、国鉄、電電公社、最近では郵政事業、道路公団、公営企業、公立保育所などにあらわれ、国・自治体再編の象徴的な「キーワード」として登場してきました。政府・財界の進める「民営化」とは、単に事業の実施主が官から民間団体に移行するというものではありません。「民営化」の目的に「官製市場の民間開放」という言葉がかかげられているように、国や自治体が関わってきたすべての公共サービスを「市場」としてとらえ、このサービスを福祉のためでなく、民間営利企業、とりわけ大企業の新たなもうけの対象に提供することを意味します。 「民営化」の対象は、国や自治体などの行政機関や外郭団体だけではありません。これまで営利企業の参入が制限されていた民間の福祉、医療、農業の分野まで、数々の規制緩和により大企業が公然と営利目的で参入できるようになってきました。これまで、国や自治体とならんで公的な役割を果たしてきた民間福祉法人、医療法人、農業団体が行ってきた公的な事業まで「市場化」「営利企業化」で解体させるものとなっています。 小泉内閣は「民営化すれば住民へのサービスがよくなる」「国・自治体の財政再建ができる」「日本と地域の経済が良くなる」とし、とにかく「官がやっているからダメ、民営化すればすべてが良くなる」といわんばかりに「民営化バラ色論」をふりまいています。 しかし、果たして「民営化」すれば、本当に住民サービスが向上するのでしょうか。住民が今抱えているくらし・福祉・雇用・営業・安全に関わる諸問題が解決するのでしょうか?。本自治研集会では、いまふりまかれている「民営化バラ色論」「民営化万能論」に対して、あらためて住民の立場でメスをいれ、あるべき住民サービスのあり方、地方自治体のあり方についてみなさんと議論を深めたいと思います。 2.「民営化」された現場で、いま起こっていることは「民営化」された現場では住民サービスはどうなっているのでしょうか。全国や大阪で起こっている事実から、それを検証してみましょう。(1)災害時、ライフラインは誰が支えるのか・・・いざという時にハッキリする公共性この1年間の間にも、震災や台風などの被害が国内でも外国でもおこっていますが、このようなときにこそ公共機関と民間営利企業の違いがハッキリと現れます。災害復興支援では、清掃、給食、保健所、福祉、土木、建築など様々な職種の自治体職員が支援にかけつけています。新潟の中越震災の復興のために、阪神大震災で災害復旧のノウハウを身につけた兵庫県の自治体職員が多数派遣されています。現地に派遣されて災害復旧にあたっているのはいずれも地方公務員です。自治体の業務を受託している民間企業は災害復旧・支援には行きません。自治体との委託契約書で災害時の対応について委託契約に記している例もほとんどありません。災害時の出動はリスクが大きいために、民間業者では特別の利益を得られるか、よほど企業のイメージアップになる場合を除けば、対応に難色を示すところが多いのが実情です。 災害時、公務労働者だがらこそ対応できるのは、職員にその業務についての専門性があり、非常事態のもとでも対応できる能力が職員に備わっていること、採算や契約などに制約されることなく、「住民の権利をまもる」ことを最優先に対応できること、それぞれの部署が行政機関として連動しており、被災自治体との連携、連絡もとれやすく、行政として機敏にかつ総合的に救援・支援ができることがあげられます。 「市場化」「民営化」の先進国、アメリカでは低所得層ほど被災者数が拡大し、行政からは、まともな支援策が受けられていません。しかも被災者は救援の対象でなく、治安の対象として扱われています。ニューオリンズでは台風の被災者に軍隊が銃を突きつけるという信じられない光景が映し出されました。まともな公的支援を行わないブッシュ政権に、多くの被災者から非難の声があがっています。 民営化された公共サービスの問題は、何も災害時だけに表面化するのではありません。通常の業務の中でも数々の問題があらわれています。それをいくつかの事例で紹介しましょう。 (2)保育所―企業の「マニュアル保育」で子どもの発達・安全に不安が全国ではじめて公立保育所が民間の株式会社に委託された東京都三鷹市では、年間の運営費が半額まで減りました。削減されたコストの大半は人件費です。民間委託された保育所では園長以下全員が1年間の「契約社員」に置き換えられました。しかも賃金が低く雇えるように若い、経験の浅い保育士ばかりが働くようになりました。保育士としての専門性も未熟ですが、これから長期にわたって経験を蓄積し、保育の「専門性」を高めようという方針はありません。雇用は短期間で、マニュアルを見て保育をしているが実態です。マニュアルは「企業秘密」とされて公開されません。保育所の運営が民間企業の手に移ったことにより、住民・利用者からの意見反映もできなくなっています。安上がりの「マニュアル保育」で本当に子どもの発達・成長が保障され、安全な保育が保てるのでしょうか。多くの人が不安の声を上げています。 大阪府下でも、民営化された保育所では短期間のうちに事業者、保育士がごっそりと入れ替わり、公立時より保育水準が低下して、子どもや保護者に様々な苦痛を与えています。公的保育の規制緩和も進んでいます。「幼保一元化」「総合施設」の名により、職員配置や施設の最低基準を緩和して、より「安上がり」に子どもを受け入れようとする動きが進んでいます。 基本保育料金とは別に、延長保育、一時保育、アトピー対応などの「オプション」サービスは、保育所と保護者との直接契約で行われることになっています。受益者負担でサービスごとに料金がつけられることによって、保護者の所得の格差が、そのまま子どもの保育内容の格差を生み出す事態になっています。 (3)学校給食―未経験のパート調理員に置き換えられ、質の低下、安全に不安も学校給食でも「コスト削減」と称して、民間委託が進んでいます。ここでもコスト削減の大半は人件費です。民間委託を推進する行政は、学校給食調理員の賃金と民間の一般のレストランのパート調理員の時給を比較し、コストをレストランのパート調理員間の水準まで引き下げようとしています。しかし、学校給食調理員の仕事は、民間の一般のレストランのパート調理員とは仕事の内容、役割が大きく異なります。年間約180食もの多様なメニューを、毎日大量に、時間内に、安全においしく調理して、提供することが求められる仕事です。しかも給食を通して子ども達に食文化を伝え、食育を行う教育労働者としての役割を併せ持っています。当然、経験や熟練が必要となってきます。 しかし、民間委託された企業では人件費を安く押えるために、調理員を正規職員で雇用せず、ほとんどを短期雇用のパート調理員で賄っています。中には、人件費をより安く上げるために、「初心者大歓迎」と公然と求人広告を出す委託業者までいます。民間委託された学校では、「調理の時間が間に合わない」「異物混入が増えた」などの事例が全国でも報告されています。「調理しているときは何をつくっているかわからない。できあがってから初めて献立の中味がわかった」というパート調理員もいます。 また、直営時には栄養士と調理員が一体となって協力し合い、それぞの専門性を生かして営まれていた学校給食が、民間委託後は栄養士と調理員が切り離され、栄養士と調理員が協力して調理することができなくなっています。栄養士の指示どおりに調理が出来ず学校給食の質の低下が起こっています。栄養士が調理について「十分煮てください」と調理員に出した指示書を読み間違えて十分間だけ煮て調理してしまったという例もあります。栄養士は、子どもの成長、発達、食教育を考えて献立を立てています。ところが受託した企業は、「栄養士の立てる献立では調理ができない」として、未熟練のパート調理員でも調理できる程度の献立に変更するよう行政に求めています。 受託業者が調理できる程度の水準に落として、給食の献立を立てざるを得なくなる場合もでています。民間委託された学校では、調理の手間が省けるように冷凍食品が増えています。冷凍食品は、加工をしていない食材よりも購入コストが高くつきます。民間委託を導入する際、行政当局は「民間委託するのは調理業務のみ。食材購入、献立は直営でするから給食の質は低下しません」と言ってきましたが、かんじんの調理現場を民間に委託することが、学校給食の質を根底から低下させる要因になっているのです。 給食の受託業者は、今後は献立や食材の購入まで「民営化」するように求めています。 そうなれば、学校給食が名実ともに民間営利企業の手に移されることになります。今日、学校給食を「食教育」として位置づけ、地産地消を進めようとすれば、地域の農家の力を引き出し、これを学校教育に生かすために行政としてのイニシアチブが求められます。民営化、アウトソーシングされれば食材購入、献立、調理までが一部の私企業に握られ、地域経済の振興、食教育の実施は望めなくなります。 (4)ゴミ処理、アスベスト・・・環境は守られるのか?循環型社会はつくれるのか?住民が排出するゴミの回収、処理も多くのところで民間企業が担っています。ゴミ焼却は、適正かつ安全におこなわなければダイオキシンなど有害物を発生します。清掃工場の操業も、安全かつ迅速に行うための専門性、熟練が求められます。しかし、清掃工場の操業を担う業者の選定も、「安ければ良し」のダンピング入札で行われ、経験をもった労働者が排除され、安全操業の知識も経験もない不安定雇用の労働者に置き換えられる問題も起こっています。かつて能勢町にあった清掃工場で未曾有のダイオキシン汚染を引きおことしました。この原因には、委託業者が低賃金の労働者を安全操業の知識も与えないまま使っていたことにありました。職場では、安全操業を行うためのモラルも確立していませんでした。ゴミ回収を委託しているところでは、業者は「どれだけのゴミを運搬したか」で料金を受け取ります。処理をするゴミは多ければよいという考えに立てば、「ゴミをどう減量するか」「リサイクル、分別、リユース(再使用)をどうすすめるか」という課題に対応ができません。 行政はごみ減量の手段として、住民に負担をかける有料化で対処しようとしています。行政は「循環型社会の創出」を口にはしますが、かんじんの処理業務を民間に丸投げして、それが実現できる保障はありません。 いま全国で大問題になっているアスベスト被害についても、行政の監督・規制が後手後手にまわったことが被害を拡大させる要因になっています。環境保全行政は、有害物を扱う民間業者の利権や営利目的と真正面から対決することが少なくありません。環境に携わる行政職員を削減、民営化して、住民のいのち・環境・安全が守られる保障はどこにもありません。 (5)学校の安全は誰が守るのか―校務員の削減、民営化をめぐって池田小学校の事件、寝屋川の教師殺害事件など、この大阪でも学校教育現場の安全をめぐって大きな問題が起こっています。子供たちが安全に学校生活を送れるように、学校校務員は学校教育環境を守り整備する重要な役割をもっています。ところが各自治体は、学校校務員を複数配置から単数配置に削減したり、学校校務員を外部委託、民営化するなどのリストラを進めています。大阪府は、寝屋川の事件を契機に、安全を求める府民の世論を受けて、学校警備を強化するために予算措置をして警備員を配置するようにしました。 しかし配置される警備員は非正規雇用の身分で劣悪な賃金で働かされています。このような労働条件で働くのは高齢者が多く、これだけで子どもの安全や学校教育現場の環境がまもられるのか疑問や不安の声も上がっています。 (6)税金、生活保護、国民健康保険、消費者相談、まちづくり・・・「民営化」、非正規化で、くらし・権利に異変が住民サービスの「民営化」がもたらす問題は、さらに広範囲に及びます。大阪のある自治体では、税務の職場に民間会社から派遣労働が入り、住民のプライバシーにふれる職員が、数ヵ月のうちに業者の都合で入れ替わる事態が起こっています。税務が民間に委託されたところでは住民の税務情報の流失、紛失などの事件も起こっています。 IT・情報化をめぐっては、「世界最先端のIT国家をめざす」として、自治体でも動きが加速化されています。一昨年の「住基ネット」の本格稼動、昨年1月からの「公的認証サービス」のスタート、さらに「総合行政情報ネットワーク」の整備が進められています。その一方、この間の個人情報の相次ぐ流失、漏洩とこれに由来するカード偽造・不正使用が問題になっていますが、電子自治体化をめぐって、あらためて住民のプライバシーや諸権利が脅かされる問題が生まれています。「住基ネット」をめぐっては、その違憲を断じる地裁判決(金沢)がでています。 生活保護の職場では、ケースワーカーの人員が削減されることにより、一人80件という国の基準を超えて、100件、200件のケースをもたされている職員も少なくありません。これでは、一人一人の顔すら覚えることができません。上司からは「生活保護費の増大が市の財政を圧迫している」として、申請書を受け取らず、また保護を打ち切るよう、圧力がかけられています。そういう中で職員は住民と上司の狭間に立たされ、まじめに悩む職員が次々と精神疾患にかかる事態になっています。ケースワーカーも30歳台で人生経験も少ない若い職員が多く、熟練を積んだ職員が少なくなっています。異動希望も大変多い職場になっています。 国民健康保険の職場では、国保料の徴収率を「高める」として、徴収員を非常勤・嘱託で雇用しています。ある自治体では基本給は9万円だけで、あとは徴収に応じて支払う歩合給を導入することにより、滞納者からの徴収率を上げようとしています。徴収員は劣悪な労働条件で、滞納者から取り立てを強化しなければ自分の賃金も上がらない状態に追い込まれています。「国保が払えない弱者を、低賃金で働かされる徴収員がいじめる」事態が起こっています。さらに、税金や国保の徴収を、民間営利企業に委ねる動きまであらわれています。取立てに「成功報酬」が導入されれば、サラ金なみの取立てが起こりかねません。 消費者相談では、多発する住民の被害や相談の増加に職員の体制が追いつかず、非正規の相談員によって相談業務が担われています。相談の対応に追われ、悪質な業者の取締りが常に後に回ってしまっています。 まちづくりに重要な役割を果たす建築確認検査業務も国の規制緩和策で民間に開放され、ある自治体では建築確認業務の9割近くを民間が行うようになり、自治体で建築確認の実務に携われる職員がいなくなる事態まで生まれています。民間が行った建築確認をめぐってトラブルが発生し、突然の高層マンション建設などで住環境が脅かされる住民から苦情が出されても、民間に丸投げしている自治体では公的な立場からの対応すらできなくなっています。 (7)「安ければ良し」・・・権利、安全、公共性を無視したダンピング競争「民営化」の目的は「コスト削減」です。入札・委託契約も、指定管理者制度でも、地方独立行政法人化でも、市場化テストでも、結局のところは、「安ければ良し」という基準です。コストを算定するにあたって、利用者へのサービスの質や安全、働く労働者の最低限の生活と権利を保障する考えはありません。保育所や学校給食調理の民間委託、ゴミ焼却施設の操業、庁舎の清掃、施設管理、さらに指定管理者制度の導入など、自治体の公共サービスが、安上がりに民間業者やNPOに委ねられています。そこで働く従業員は最低賃金以下で働かされている労働者までいます。NPOに委託しているところでは、「有償ボランティア」の名で、労働基準法を適用せず、最低賃金以下で働かされている労働者もいます。 安上がり入札により、安全や公共性が脅かされる事態も生まれています。大阪府立養護学校では、障害をもった子どもたちを運ぶスクールバスを民間に委託していますが、入札に際しては「最低制限価格」などの歯止めもありません。低価格競争が繰り広げられ、入札を実施した12校のうち実に7校までもが特定の会社が落札する結果となりました。落札した会社は最近まで貨物輸送を専門に行っていた業者です。落札価格は大阪府が見積もった予定価格の半分でした。 これで安全な運行ができるのか、担当職員も首をかしげる様子だったといいます。これまでスクールバスが民間に委託された学校では保護者から「委託業者が替わって運転が乱暴になった」「子どもが恐がってバスに乗るのをいやがる」という声もあがっています。 自治体の業務を民間委託する際に用いられる入札・契約では、コスト削減のためにダンピング競争が促進され、1円でも落札できるしくみになっています。憲法25条に記す「健康で文化的な最低限度の生活」をコストで保障する歯止めは何もありません。 (8)住民サービスを担う公務員は、非正規、アルバイト、派遣労働者に置き換え公務員についても「多様な働き方を進める」として、正規職員をなくし、いつでも解雇ができる期限付きの非正規雇用に置き換えようとしています。政府の経済財政諮問会議は「政府の規模を10年以内に半減する」目標を打ち出し、地方公務員について「5年間に4.6%減」という純減目標の上積みを求めています。リストラで余った公務員の首切りをやりやすくするために、身分保障を撤廃する「公務員制度改革」の準備もすすめられています。正規職員を減らした職場では、民間企業への委託、民間派遣会社からの派遣労働者の受け入れをすすめています。職員の半数以上または全部が非正規労働者という職場も珍しくなくなりました。堺市では正規職員が行っていた業務を最低賃金並みの賃金で働く「バリュアブルスタッフ」という名のアルバイトに置き換えようとしています。住民と直接接する自治体の窓口業務のほとんどを、2ヶ月雇用のアルバイトや、民間からの派遣労働者にまかせる自治体もあらわれています。 全国の自治体では、「民営化」によって正規職員が100名、200名の規模で「整理解雇」され、民営化した法人に2割から4割の賃金カットで移籍することも行われています。また、50歳前から当局による退職勧奨が行われ、毎年定年退職前に仕事を辞める職員が大量に生まれ、欠員も補充されず、自治体の業務にまで支障が生まれています。人員削減による労働強化、健康破壊で60歳定年を待たずして「自発的に」退職する人も少なくありません。大阪自治労連の春闘アンケートでは、正規職員の55%が「定年まで働き続けることに不安がある」と訴えています。 (9)民間中小企業の労働者と公務員とで「賃金引き下げ」を競争公務員の賃金・労働条件をめぐっては、「給与構造の見直し」と称して、すべての自治体職員の賃金を一律大幅にカットし、上司の気に入る者だけを恣意的に昇給させる成果主義賃金を導入しようとしています。賃金相場は、地域の民間の労働者の賃金、それも中小零細企業の賃金並みの水準にまで引き下げることをねらっています。中小零細企業の賃金は大変劣悪です。これは大企業による下請けいじめ、身勝手な海外移転、政府の失策による経済不況によってもたらされたものです。この劣悪な賃金水準こそ放置してはならず、労働者が人間らしく暮らせる賃金水準となるように大企業、国・自治体は責任を果たすべきです。しかし、政府・財界は、中小零細企業の低賃金問題を解決するどころか、公務員賃金をこの水準にまで落として、日本の労働者全体の賃金をさらに押し下げていこうとするものです。これでは地域の景気はますます冷え込み、住民の生活悪化、自治体の税収減の悪循環が繰り返されます。 (10)権利保障、公共性の機能を喪失―被害・犠牲は住民にこれまでのべた数々の事例でも明らかなように、公務公共業務を民間に丸投げしたところでは、自治体が公的な立場で監督・指導することができなくなり、現場の主導権が民間営利企業に握られることになります。住民の実態や声がつかめず、対応できるノウハウもなくなり、もはや住民サービスを担う能力すら喪失することになります。「民営化」で、公的業務が無批判に民間営利企業に委ねられれば、安全が脅かされ、一番の被害を被るのは住民・利用者です。JR西日本の福知山線の脱線事故、日本航空で安全を脅かす数々の事故、リコールを隠しつづけた三菱自動車、安全管理を怠り未曾有の原発事故をおこした関電などの電力会社、コストを削減競争で安全に対する意識が欠如し、集団食中毒事件をおこした雪印乳業・・・いずれも小泉内閣が公務から置き換えている民間企業で起こっている事故・事件です。営利優先を市場命題とさせる規制緩和政策に何のメスを入れることなく、こうした体制に公務公共サービスを丸投げしていくことは、住民の生命・権利に対する公的責任を完全に投げ捨てることになります。 公務の民営化・市場化は、住民の権利を保障すべき地方自治体がもはや地方自治体としての機能と役割を発揮できず、逆に住民の権利を侵害する機構へと変質させる事態を引き起こします。住民は権利が保障されるべき「主権者」ではなく、「自己責任」でサービスを「選択」する「顧客」とみなされ、営利企業の儲けに「貢献」してくれる負担能力のある住民のみが優遇されるようになります。 住民の中に一部の「勝ち組」と、圧倒的多数の「負け組」がつくりだされ、「負け組」が公共サービスから排除される事態が引き起こされるのです。公務の民営化・市場化は、住民の人権を保障する機能の低下、自治体行政の質の低下、住民による民主的コントロールの低下、公的コントロールが効かなくなることによる政・財(業)・官の癒着、利権構造の再生産、公共サービスの働く労働者の権利侵害などの問題を生み出します。「民営化すれば公共サービスはよくなる」どころか、「民営化」こそが住民の権利侵害、公共サービスを破壊するものと言わなければなりません。 3.憲法改悪と一体になった「民営化」「構造改革」(1)国民の権利保障を放棄して、戦争する国、財界奉仕の国へ政府・総務省は、今年の3月に、これからの地方自治体のあり方についての方針を定めた「新地方行革指針」という方針を発表しました。その内容は、従来からの地方自治体の機能を前提とするのでなく、「これからは公共サービスは多様な主体が担う」として、国や自治体が直接行ってきたサービスはとりやめ、それを「新しい公共空間」として、民間企業やNPO、住民に全面的に委ねていこうとするものです。地方自治体は、住民に対する直接のサービスを行わず、民間など多様な主体が公共サービスを担えるようにするための「戦略本部」になるというのが方針です。この方針のバックボーンには、地方自治体を民間営利企業と同一の企業体とみなすNPM(ニュー・パブリツク・マネジメント)という財界の意向にそったイデオロギーがあります。財界は「50兆円のビジネスチャンスの到来だ!」として、あらゆる公共サービスへの参入をねらっています。 この「方針」を全国の地方自治体におしつけるために、総務省は「集中改革プラン」を今年度中(2005年度)中に策定して「公表」するように全国の地方自治体に強要しています。その内容は、公務員の大幅な人員削減とともに、指定管理者制度、地方独立行政法人、民営化など、あらゆるアウトソーシング(外部化)のメニューを示して、「スリム」「小さな自治体」にしようとするものです。 このような「自治体版構造改革」は、憲法9条の改悪と一体となって、国民・住民に保障された権利そのものを破壊する動きの一環として進められようとしています。自民党の「改憲」案には、9条の改悪とあわせて道州制の導入を打ち出し、地方自治体を住民自治の組織から、国家の下部機構の組織へと変質させようとしています。「安心・安全」を口実に住民への監視体制を強める「国民保護計画」の策定・実施も進んでいます。自衛官や警察官を職員に採用して自治体の重要ポストにつけるところもあらわれています。不足している消防職員・体制の整備は不十分なまま、自衛隊・警察官のみ増員させています。 「戦争する国づくり」を行おうとすれば、全国民・住民をすみやかに国策遂行のために「統合」することが必要となります。国策に対してモノをいい、協力しない自治体があればこれが障害になります。そのために、都道府県を廃止して道州制を導入したり、強引な市町村合併で地方自治体数を減らし、最終的には小選挙区制に対応する300にまで激減させることを企んでいます。すでに市町村合併が行われたところでは、住民に身近な公的施設の統廃合が進んでいます。住民の声を代表する地方議会の定数の大幅に減らされ、民意が反映されにくい小選挙区制が導入されています。 財界の意向に沿った「スリムな国・自治体づくり」と、「戦争する国づくり」が一体となって、自治体再編が進められようとしていることに警戒しなければなりません。 (2)大都市・大阪が「民営化」の急先鋒に・・・市場化テスト、地方独立行政法人、指定管理者制度政府・財界の「自治体版構造改革」を急先鋒役としておしすすめているのが大都市部の自治体です。大阪府は、全国の公立病院ではじめて地方独立行政法人化を推し進めようとしています。また関西財界の要請を受けて国に先駆けて市場化テストを導入・実施しようとしていています。府民には、府立高校の統廃合、減免制度の改悪、乳幼児医療助成制度への負担金導入など負担・犠牲を際限なくおしつけています。大阪市も「市政改革マニュフェスト」をうちだし、市民への福祉施策が市の活力を「阻害」しているとして、敬老パスの廃止など市民のくらし・福祉をバッサリ切り捨てようとしています。その一方で、りんくうタウン、関空2期工事、WTC、ATC、フェスティバルゲートなど破綻した大型開発の後処理には、「財政難」には関わりなく、湯水のように税金をつぎ込んで、大企業・大銀行・大手ゼネコンへの奉仕、便宜提供をはかっています。 指定管理者制度では、府立体育館など主要なスポーツ施設を南海電鉄や松下系列の民間会社に管理運営を丸投げしています。 地方制度「改革」をめぐって関西財界は道州制の導入を進め、大阪府も自ら道州制に移行する方針を打ち出しています。市町村合併でも、大阪ではすでに住民投票で「ノー」の決着がつけられているにもかかわらず、民意を無視して、「合併推進本部」をつくり、強引に推し進めようとしています。 大阪は、「自治体版構造改革」の闘いの最前線の位置に立っています。 一方、長野県や高知県、新潟県など中山間地の自治体では、政府の構造改革路線に対して、合併をせず、保守の人も含めて自治体ぐるみで、住民とともに自主的な自治体再建の道を歩もうとする新しいきも現れています。地方自治体をめぐる厳しい情勢の中で、国策に屈服して自治体解体の道を歩むのか、それとも国策に乗らず、住民とともに自主的な自立再建の道を歩むのかが問われています。 4.「民営化」「構造改革」に対する対抗軸・・・大阪にも住民自治の新しい芽生えが(1)数々の「民営化」に対し、住民の権利、公共性を守る運動が広がる。「民営化」の動きはすさまじいものがありますが、大阪では、これを許さず公共サービスを守る住民、労働者の新しい運動が起こっています。府立5病院の地方独立行政法人化に対して、地域・患者ぐるみの運動が広がっています。大阪全体の規模で「府民の会」が結成され、さらに5病院ごとに地元住民や患者が中心となって連絡会が結成され、地元の医師会長、開業医からも「独法化反対」「直営で充実を」の声があがっています。 公立保育所民営化でも、保護者、地元住民からの運動が広がっています。枚方、大東、高石で民営化された保育所の保護者が裁判闘争に立ち上がっています。寝屋川市で民営化の対象になっている公立保育所は、その地域でも数少ない公共用地で災害時の避難場所にもなっており、地元自治会が「地域住民の財産として残してください」と市に反対の意見書をあげています。八尾でも市当局の一方的な民営化の決定に対して、「保護者、住民の声の聞かず勝手に決めるな」という世論が日増しに広がっています。 指定管理者制度でも、民間営利企業への丸投げを許さない住民、利用者の運動が進んでいます。昨年、堺市が図書館に指定管理者制度を導入しようとしましたが、利用者が立ち上がり、短期間のうちに2万人近くの署名を集めて、当局に実施を断念させました。吹田では市職労が利用者によびかけて懇談会・学習会を重ね、これまでどおりのサービスの確保、充実を求める運動が広がり、市当局は「公の施設」について、当面は民間企業への丸投げせず、現行の公益法人が指定管理者に指定されることになりました。富田林では住民団体が参加して「公の施設を考える懇談会」がつくられています。新日本スポーツ連盟や女性団体など、施設の利用者団体も、施設の公共性と民主的な運営を求めて運動に立ち上がっています。 入札・委託契約でも、最低限の生活保障や人権を無視したダンピング入札に歯止めをかける「公契約規制」の運動も進んでいます。2002年に大阪労連、自治労連も参加して結成された「公契約法の実現をめざす大阪懇談会」には、建設共闘、福祉保育労、全印総連、出版労連などの民間労働組合に大商連も加わり、公正な契約と適正な賃金確保を求める自治体への運動をすすめています。「ILO94号条約の批准、公契約法の制定」を求める意見書も大阪府議会、吹田、松原、大阪狭山などで議会決議され、公共工事の受注者に対して適正な賃金支払いを行うように文書で指導する自治体も広がっています。 (2)地域に広がる「九条の会」、新しい「自治のしくみ」をつくる運動も憲法九条改悪の動きに対して、大阪府下各地に300を超える「九条の会」が結成されています。「九条の会」には、保守、無党派、元首長など、立場や思想の違いを超えて大きな共同のうねりをつくりだしつつあります。自治体の職場にも「市役所九条の会」が、堺や吹田などでつくる動きが広がっています。大阪では昨年、住民投票も実施して市町村合併の押しつけノーの審判を下す画期的な運動が広がりました。市町村合併のときの住民投票の運動が継続し、市長選挙、民主的自治体建設の共同にまで発展しています。今年(2005年)に行われた門真市長選挙、堺市長選挙では、合併問題をめぐる住民投票運動で築いた共同が、そのまま選挙での共同に発展しました。従来のわくを超えた住民共同がこの市長選挙で広がったのは注目すべきことです。 「住民が主人公」の自治体をめざして、従来の個別の政策・要求にとどまらず、住民が自治体の政策決定や運営に参加・参画する「自治のしくみ」づくりの運動が始まっています。岸和田では市民から公募で委員を募り、意見交換を重ね、「自治基本条例」を制定しました。この条例には、市の政策決定あたり、一定数の住民から請求があれば住民投票を実施することを市に義務づけています。住民投票には全国で初めて定住外国人に投票権を認める者になっています。 八尾でも、地域経済振興条例に続き「自治基本条例」制定に向けて活発な討論が行われています。来年4月に政令指定都市への意向を計ろうとしている堺では、地域ごとに自治の単位を認め、そこに住民への参画を保障するための「堺自治モデル」を市職労が提案し、市長選挙の争点にもなり、議論が始まっています。 5.いまこそ発揮されるべき、自治体・公務公共労働者・労働組合の役割政府・財界による自治体版構造改革路線と住民との矛盾が一層広がり、これに対する新しい住民の運動が起ころうとしています。このような情勢のもと、住民に奉仕する職務を担う自治体労働者、公務公共労働者は、いまの自治体再編の動きをどうとらえ、どんな役割を発揮すべきなのでしょうか。政府・財界はいま、自治体労働組合の活動そのものの息の根を止めようとしています。大阪市で「連合」自治労の組合が、労働組合の原則を逸脱して市当局と癒着してきた問題を絶好の口実にして、これがあたかもすべての自治体労働組合に共通した問題であるかのように描き上げ、自治体労働組合の団結権、団体交渉権など労働基本権を大幅に制限しようとしています。さらに政治活動に対して刑事罰を加えるなどの法改悪まで企んでいます。 このような不当な規制や弾圧を許さず、自治体労働組合が自治体行政の民主化をかかげ、自らの仕事の専門性を生かして、行政の動きや情報を発信し、住民と結びついて活動することが今日求められています。 (1)なぜいま公務労働者か・・・住民が実感として受けとめられる運動と実践を自治体労働組合、公務公共労働組合は、「この仕事は自治体の責任で、専門性をもった自治体労働者・公務公共労働者が担うべきだ」と、住民が実感を持って受けとめられ、支持される状態を運動と実践を通じてつくりあげることが重要です。「なぜ、この仕事が自治体の責任、公務労働者で行わなければならないのか」を住民の利益、要求に照らして明らかにして、住民の共同の要求にまで練り上げていくことです。また、自らの仕事・職場の改革を提示して、労働組合の力で、行政に実践させていくことも必要です。府立5病院、公立保育所、公立図書館の司書、自校直営の学校給食などでは、職場の実践を通じて、民間営利企業ではできない優位性を示し、それが住民や利用者の支持を得ている例は少なくありません。 (2)勇気をもって住民にうって出ることで元気になった・・・府立5病院の独法化のたたかいから府立5病院の地方独立行政法人化に対して、今年1月、自治研集会の企画としてシンポジムウムを開催したところ約200人の住民、患者、自治体労働者が集まりました。そこでは地域の民間や市町村の病院では果たせない高度医療を始めとした役割があらためて明らかになり、「直営で充実を」の声が大きく広がりました。このシンポをきっかけに府的な「守る会」の結成、府立5病院ごとに地域の「守る会」の結成など、地域ぐるみ、府民ぐるみの運動に発展しています。府職労の職場の仲間も、住民や患者に「打って出る」とりくみを進めることによって、自分達の仕事がこれだけ住民、患者に期待されていることに確信をもち、職場でも組合員拡大をすすめるなど、元気に活動を進めています。 (3)「子どもたちの成長、安全のために妥協はありません」・・・学校給食調理員大阪自治労連学校給食部会は、各自治体で「給食まつり」を開催しています。専門性をもった調理員が日頃調理している学校給食の試食会を行い「子どもたちに豊かで安全な学校給食を提供するために私たち調理員には妥協はありません。自校直営だからこそできるのです」と働きかけ、市民からも支持を得ています。岸和田市では自校直営で府下でも高い水準の学校給食を行ってきましたが、教育委員会が「民間委託」の検討を始めたことに対して、「自校直営をまもれ」という要請署名が短期間のうちに市民の過半数近く寄せられています。(4)「民営化するかしないかは住民が決める」・・・保育所民営化のたたかい八尾市では、公立保育所の民営化提案に対して、市職労は最初から「民営化反対」の意見を住民におしつけるのではなく、「民営化するかしないか、決めるのは市民。これだけ大事な問題を住民の声も聞かずに決めるもはおかしい」と住民に民営化の問題を提起して、意見を聞く運動をすすめました。全戸への住民ビラ配布、地域への訪問対話をすすめ、民営化の問題点を知らせてきました。短期間のうちに、多くの市民から意見がアンケートに寄せられました。そこには「こんな大事な問題を市民に知らせずに決めるのはおかしい」「保育所は公立で充実させてほしい」という声があがっています。民営化の動きは進んでいますが、市職労は「この運動は、やればやるほど元気になる」と共同をさらに広げています。 (5)「こんなときによく来てくれた」・・・タウンミーティングで住民の中へ吹田市労連は、市政問題や住民要求をテーマに中学校区単位で「タウンミーティング」を開き、自治体労働組合として、住民と直接対話する活動を続けています。そこでは自治体職員に対する厳しい批判もありましたが、「大阪市問題で公務員がバッシングを受けているこんなときに、よく住民のところまで意見を聞きに来てくれた」と歓迎されています。そして「いくら財政が厳しくても住民の福祉はまもるべきでないか」「何でも民営化というのはおかしい」という声が寄せられています。(6)「住民と自分のために、いい仕事がしたい」から自治体労働組合として、自分たちの仕事を住民の立場で見つめなおすとりくみも行われています。大阪自治労連の各単組では、住民の立場で仕事のあり方を考える「地方自治研究集会」が積極的に取り組まれるようになってきました。「市民と自分のためにええ仕事がしたい!」をテーマに、大阪自治労連の衛星都市職員労働組合連合会(衛都連)では、毎年、職場別交流集会を開催。専門家も研究者を交えた日常的な研究会活動として、「公務労働研究会」、「国民健康保険職場研究会」、「自治体財政再建研究会」で公務労働の理論的・実践的な研究活動を進めています。 日々の職場の仕事を通じて思い悩んでいた職場の組合員、特に30歳台の若い組合員がこの研究会に積極的に参加し、みずからの職場・仕事をみつめ、語り合う中で、新たに「働きがい」「生きがい」を感じはじめています。 以上の経験から見て、自治体労働者・公務公共労働者はどんなときに、住民と向き合い、住民のためにがんばろうと、元気になるのでしょうか。 それは、自分たちの仕事が、住民や利用者に喜ばれている、期待されていると実感できたとき、自分たちの仕事の値うちや役割に理論的にも確信が持てたときだといえます。 大阪自治労連は、自治体労働者・公務公共労働者として、公務員バッシングのもとでも、殻に閉じこもるのでなく、「 憲法と地方自治を守り発展させる」という一つの決意と、「住民に打って出て、住民とともに自治体らしい自治体をめざす」、「職場で住民のための公務労働を実現するために闘う」という2つの勇気を胸に、求められる役割を発揮しようとしています。 6.この大阪で、「自治体らしい自治体」をつくりあげていくために(1)対抗軸は―憲法にもとづく住民の自治・権利を守り、発展させること。「住民の福祉の増進を図る」(地方自治法)ことを責務とする地方自治体は、憲法にもとづく住民の権利を保障する役割を発揮しなければなりません。憲法と地方自治を発展させる立場で「こんな地域・自治体をつくりたい」という住民要求を結集して、その実現に向けた運動を展開することが求められます。政府・財界による自治体・公務の「民営化」「市場化」に対する対抗軸として 第1に憲法で保障された住民の権利を守り、発展させ、地方自治体の行政に生かすこと、 第2に、自治体行政がもつ専門性を高め、住民サービスの質の確保・向上をはかること。 第3に、行政に対する住民による民主的コントロール機能を働かせること。自治体行政のあらゆる決定の場に、住民が「主権者」として参画・参加できるようにすること、 第4に、癒着、利権をなくし、公正・清潔な行政機構をつくること、 第5に、すべての公務公共サービスに働く労働者の諸権利、労働基本権を保障することが必要です。 この立場で、あらためて公務公共サービスを見直すことが必要です。民営化による弊害があるのであれば、これを改善し、逆に「公営化」することも必要です。 (2)これからの公務公共労働にとって必要なことは住民に対する公共サービスは、直営で公務員が担う場合はもちろん、民間事業者に働く公務公共労働者が担う場合であっても、次の点が保障されなければなりません。それは、公務を担う職員・労働者に住民サービスを責任をもって担える高い専門性、熟練性が備わるようにすること、住民、利用者に対する安定したサービスを継続して行えること。個別の部門だけでなく、他の公的機関、行政と連携して総合的に住民の権利保障、サービス提供ができる体制が保障されることが必要です。以上を保障するためには、公務労働者は住民のために安心して公務に専念できる賃金・労働条件が保障されなければなりません。公務労働から専門性を奪い、公共性よりも営利を優先する「民営化」では、住民サービスに責任をもつことはできません。 住民の生命、権利、くらし、営業を守る公共サービスと、企業の営利目的は相容れるものではありません。自治体労働組合、公務公労働組合は、公務労働の果たす役割を、実践でも運動でも発揮し、住民の支持と理解を得ていく努力が一層求められます。 (3)「こんな地域、自治体をつくりたい」―住民の要求、ねがいを結集して「くらしと他方自治をまもる要求行動」をすすめよういま、小泉構造改革によって「自治体が自治体でなくなる」事態が憲法改悪の動きと一体になって引き起こされようとしています。しかし、この改革の本質が明らかになるほど住民との矛盾は激しくならざるをえません。民営化・市場化の道ではなく、あらためて自治体に憲法と地方自治の原則をふまえた「自治体らいし自治体」をつくりあげていく国民的な運動が求められています。いまこそ、地域、職場から住民の怒り、ねがいを集め、「こんな地域、自治体をつくりたい」という積極的な要求・政策をかかげ、住民と自治体・公務労働者、労働組合が共同して「憲法・くらしと地方自治をまもる」ための行動をまきおこそうではありませんか。今年の自治研集会が、大阪で新しい地方自治運動のうねりをつくりだす契機となることを願って、本集会への基調報告とします。 |
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以上 |
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第15回地方自治研究集会全体集会報告 [2006.2.27] |
自治研・地方財政 |
第15回地方自治研究集会 分科会 [2006.2.27] |