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第16回大阪地方自治研究集会 [2006.11.23]

[UpDate:2006/11/23]

第16回大阪地方自治研究集会
   「格差社会における自治体の役割りを問う」


11日の全体集会に続き、今週より課題別に分科会を開催

「格差社会における自治体の役割りを問う―憲法生かし、地域に連帯と共同を」をテーマに第16回大阪地方自治研究集会が去る11月11日(土)に開催された全体集会を皮切りにスタートしました。大阪市内の社会福祉指導センターで開催された全体集会には約150人が参加。財界と安倍内閣による構造改革が住民と自治体に及ぼしている問題について各分野から報告・発言を受け、討論と交流を深めました。全体集会は実行委員長の藤永延代さん(おおさか市民ネットワーク代表)のあいさつの後、久保貴裕事務局長(大阪自治労連行財政部長)が基調報告。「小さな政府」「官から民へ」という構造改革のもとで、住民負担、権利侵害が拡大し、公共サービスがゆがめられ、安全・安心・地域経済が崩されている実態を指摘し、今こそ「見直そう、問い直そう自治体の仕事と住民の安全・安心」をスローガンに、住民と自治体労働者が共同して自治体らしい自治体をつくる運動を進めることの重要性を強調しました。

 続いて福岡自治労連の藤藪貴治さんが「北九州市の生活保護行政について」、大阪市労組の井川信子さん(元職員)が「大阪市公務員バッシングの真相―阿倍野区役所刑事告発事件で不起訴をかちとった闘いについて」それぞれ特別報告を行いました。

 藤藪さんは、北九州市で生活保護申請拒否による餓死事件が相次いでいる要因に、厚生労働省による生活保護抑制の指導と、数値目標まで示して抑制をすすめている北九州市当局の方針があることを指摘。担当職員の多くが申請拒否を「適正だった」と認識していることにも触れ、マスコミにも訴えて世論を大きく広げることによって、職員と市民がともに運動しながら解決していける状態をつくりあげることが大切だと訴えました。

 その後、大阪自治体問題研究所理事長の鶴田廣巳氏をコーディネーターに、リレートークと討論を実施。リレートークでは、「指定管理者制度が導入されたもとでの公共施設について」(前田仁美・大阪自治労連副委員長)、「のしかかる大増税と負担」(佐飛淳一・税理士)、「深刻化する大阪の公害と後退する公害行政」(久志本俊弘・大阪から公害をなくす会)をテーマに問題提起がされ、参加者による討論を行いました。フロアからは「生活保護を打ち切る際の通知書に本人の権利が明記されていない。大阪府に問いただすと『たかが紙切れ一枚で・・・』という対応だった。生活保護が切れたら死ぬかもしれないという自覚がない。北九州の事例を大阪でまん延させないよう、市職労とともに改善の取り組みをすすめている」(吹田生活と健康をまもる会)、「保育所民営化の際、市は『保育水準は低下させない』と言ったが、その後の実態をまったく検証していない。民営化になって子どものケガが増えており、必要な体制ができていない」(枚方市の保護者)、「府立高校生の26%が授業料減免を受けているが、府は15―16%にまで減らす数値目標を決め、準生活保護世帯を減免対象からはずした」(府高教)など、「構造改革」が大阪府民にもたらしている実態が各分野から語られました。

自治体労働者の立場から発言した大阪自治労連の谷真琴委員長は「住民の人権を保障すべき公務の仕事が変質しようとしている。国保の滞納整理をゲーム感覚で研修させるなど、公務員が住民を主権者として見なくなるように仕向けている例もある。あらためて憲法を基本に、『住民のための仕事とは何か』を職場で問い直し、話し合い、改善する取り組みが求められている。いま、これが実践できるのは自治体労働組合しかない。大阪自治労連の役割は極めて大きい」と強調しました。

参加者からは「公務員の働きがいとは何かを考えさせられた」「職員として本当にやりがいある仕事をするために住民と団結して闘わなければならない」(自治体労働者)、「格差社会は労働者の団結が崩されていることと同時に進んでいる。これからの労働組合が果たす役割は大きい」(住民)、「北九州の報告は怒りを覚えた。大阪も大変だと思う。今後の分科会にも期待したい」(議員)などの感想が寄せられています。


〜分科会報告一覧〜
>> 特定健診問題分科会
>> 男女平等分科会
>> 保育分科会
>> 公立病院分科会
>> 公共交通分科会
>> 税と社会保障分科会



●第16回大阪地方自治研究集会 基調報告

「格差社会」における自治体の役割を問う・・・憲法を生かし、地域に連帯と共同を


はじめに  今年の大阪地方自治研究集会の意義

 財界・政府が進めている「構造改革」の特徴は、 崗さな政府・自治体」にして福祉に対する公的責任を放棄し、住民に「大きな負担」をおしつける。◆峇韻ら民へ」として公務公共サービスを民間大企業の利潤追求の対象に全面開放する。「強い政府・自治体」として、「戦争する国」づくりと住民に痛みをおしつける国づくりをすすめることにあります。「構造改革」は深刻な「貧困と格差」を生み出しています。OECD諸国の相対貧困率(可処分所得が中位の半分にも満たない生産年齢人口の割合・2005年)によると先進国の中で日本はアメリカに次いでワースト2位になっています。大阪は特に、失業率、企業倒産件数、勤労所得水準、生活保護率、就学援助世帯数など、どの指標を見ても深刻で、憲法に保障された諸権利が侵害されています。

 小泉内閣の継承者として発足した安倍内閣は「構造改革」をさらに推進し、「5年以内に憲法を改正する」と戦後初めて憲法改悪を公約しています。このような情勢の下で開催される「第16回大阪地方自治研究集会」は「格差社会における自治体の役割りを問う―憲法を生かし、地域に連帯と共同を」をテーマにすえました。大阪における「格差・貧困」の現状を見つめ、憲法をくらしに生かす「自治体らしい自治体」を実現させていくために、みなさんの積極的な討論をよびかけるものです。


1.「構造改革」は住民のくらしと自治体に何をもたらしたのか

(1)のしかかる大増税と社会保障の改悪 ―自治体が住民犠牲の執行機関に

今年の6月、大阪府下市町村の窓口に多数の住民が押しかけました。住民税が10倍にはねあがり、国民健康保険料、介護保険料も多大な負担がおしつけられたのです。介護保険料は4月に大阪で平均35%もの負担増になりました。「この税金、間違っていないか?」「こんなに払えるわけないやろ」「死ねと言うんやな・・・」「役所の前で首くくったる」など朝の始業時から窓口に住民が押しかけ、夕方の終業時を過ぎてもロビーは行列であふれかえりました。押しかけた住民は大阪市では12万4千人にのぼりました。住民には負担が増大する一方で、大企業・大資産家には年間で2兆2千億円もの大減税を実施しています。リストラ、賃下げ、営業不振で青息吐息の住民には大増税をおしつけ、大企業は大幅な減税。しかも米軍基地の移転には3兆円もの支出をしようとしているのです。このうえ政府は「骨太2006」で増税・社会保障の「一体改革」をうちだし負担・犠牲を一層押しつけようとしています。

(2)生活保護申請を拒否され、死に追いやられる住民 

 生活保護をめぐって痛ましい事件が相次いでいます。今年の5月23日、北九州市門司区で57歳の男性が栄養失調により餓死する事件が起こりました。この男性は昨年8月に失業して無収入になり、同年9月14日には水道、ガス、電気のライフラインがすべて停止しました。報道によると、この男性は計3回、生活保護の申請の意思表示をしていたと言います。なぜこの男性が、餓死・孤独死に至ったのか、行政の対応に問題はなかったのか、その原因が徹底して究明されなければなりません。

 この原因には北九州市の方針に加え、厚生労働省が今年3月に「生活保護行政を適正に運営する手引きについて」を全国の自治体に通知し、生活保護受給者の削減を指示したことがあげられます。 京都では生活保護行政を裁く判決が下されました。裁判となった事件は、親の介護疲れと生活苦に陥った54歳の息子が無理心中をはかって86歳の認知症の母親を殺し、自らも命を絶とうとした事件です。この息子は生活保護を市役所に申請していましたが「働けるはず」「失業保険がある」などの理由で却下されていました。判決では、裁判長が、男性の献身的な介護や心情に理解を示し、執行猶予月の判決を下しました。被告人だけでなく、現在の介護制度、生活保護制度そのものが裁かれているのです。

(3)払えない住民には、憲法上の権利まで制限・停止

 住民は耐え難い負担がおしつけられると同時に、低所得者にも厳しい徴収が強化されています。各地の自治体では、強引な税金の取り立て、国保滞納者からの保険証取り上げが行われています。大阪市の税務の職場では、職員は上司から「滞納者に対して『お願いします』という言葉を使うな」と、滞納整理を強化するよう指導されています。滞納整理に警察官を立ち会わせる自治体もあらわれました。学校現場においても、学校給食費の滞納者が多い学校に対して給食の食材を減らす自治体が全国にあらわれてきました。大阪府教育委員会は、府立高校の入学金を期日までに完納しない者は入学を認めないように規則を改悪しようとしています。さらに、税金の滞納者に対して、行政サービスを制限・停止する条例を設ける自治体まであらわれています。税金や負担金を「効率的」に徴収するためにクレジット会社に立て替え払いさせる制度も導入されています。住民は延滞料の替わりに高い利息を払わされ、多重債務に追いこまれかねません。「大きな負担」を背負えない住民には憲法上の権利まで制限・停止される事態になっています。

(4)大型開発と利権は拡大・・・規制緩和で公共財産を金もうけの餌食に

「構造改革」は大企業に対しては破格の便宜提供を行い、新たな利潤拡大の場を与えています。大阪市は地下鉄、市バスなど市営交通の民営化をうちだし、市民の大切な足を民間企業に売り渡そうとしています。「改革利権」と言われているように、政府の規制改革・民間開放推進会議の議長を務めていた(株)オリックスの宮内会長は、農業や医療など規制緩和をした分野には自ら経営に関わる企業を参入させています。梅田貨物駅跡地である「梅田北ヤード」の開発にも(株)オリックスが参入しています。「宮内氏はオリックスの利権のために規制緩和を進めてきた」と言う財界人もおり、「改革利権」がはびこっています。大阪市や堺市でも「市政改革」の本部に財界の立場から学識経験者として加わった大学教授がいますが、両市はこの学識経験者が経営に関わる会社と随意契約をしていました。公共事業をめぐる談合汚職も依然として続いています。ムダな大規模開発も関空2期工事や安威川ダム建設などで継続しています。大阪府は破綻した「りんくうタウン」の処理に新たに1800億円もの府費を投入しようとしています。

 部落解放同盟(「解同」)と行政との癒着も拡大しています。大阪市は芦原病院や市営駐車場の管理委託など「解同」が関わる事業には、返済する意思もないことを承知の上で多額の資金をつぎ込み、債権放棄までしようとしています。住民には徹底して負担をおしつけ、徴税を強化し、「返済できる見込みのない者には貸さない」と融資や貸付を拒否しているのとは極めて対照的です。

(5)自治体労働者は苛酷な労働強化で健康破壊・・・「成果主義賃金」で管理統制も強まる

公共サービスを担う自治体労働者の労働強化もすすんでいます。国が押しつける「集中改革プラン」による大幅な人員削減により、福祉など住民サービスの低下も起こっています。ケースワーカーも国の基準(1人80ケース)を超えて、100、200ケースをもたされ、一人一人にまともな対応ができない状態になっています。人員不足による労働強化、長時間勤務で健康破壊も深刻です。上からの官僚的な統制も強まり、職場や自治体職員の裁量で仕事ができなくなっています。

 政府・財界は、大阪市における「公務員バッシング」を最大のテコにして、自治体労働者・労働組合の権利を剥奪し、公務員の労働条件の全面的な改悪をはかろうとしています。「構造改革」を推進するために導入がねらわれているのが「成果主義賃金」です。税金を徴収する自治体職員に対して、上司が「滞納整理」の数値目標を書かせ、目標の達成度で賃金や昇進を決め、「成績」が悪い職員には賃下げ、降格などで制裁を加えるというまのです。「成果主義賃金」は生活保護申請の拒否、国保滞納者への差押さえなどにも導入されています。上からの苛酷なノルマ強要と、住民との狭間にたたされ、真面目に悩み苦しみ、精神疾患にかかる自治体労働者も少なくありません。働きがいをなくし定年以前に途中退職する職員も増えています。
 

(7)「愛国心」を強要し、「格差社会」の拡大・固定化をもたらす教育基本法の改悪

 国会では、子どもに「愛国心」をおしつけ「戦争する人間」をつくる教育基本法改悪が緊迫した局面をむかえています。学校の現場では、「日の丸」「君が代」を罰則つきで教職員や生徒に強制する動きもあらわれています。さらに教育基本法の改悪案では、「能力に応じた教育を受ける機会を与える」「各個人の有する能力を伸ばす」など教育の場に能力主義を持ち込み、一部のエリートと多数の下層労働者をつくる「格差社会」の拡大・固定化をもたらすものになっています。

 教育基本法改悪を先取して、小・中・高等学校に「格差」や「序列」をつくり、就学前から「能力」による子どもの「振り分け」を行い、高校では受験対策最優先で必須科目が未履修となるなど、学校教育を歪める様々な問題が引き起こされています。教員は勤務評定による労働強化、人員不足により、十分に子どもに向き合うことが困難になっています。このような教育現場における競争の激化とギスギスした状態の中で、いじめの問題もおこり、子どもの権利を守り、人格の形成をはかるべき学校教育が荒廃をしかねない状態になっています。

(8)男女平等、女性差別撤廃の国際的な流れに逆行するバックラッシュの動き

 国連での「女性差別撤廃条約」など男女平等社会をつくりあげていく国際的な流れや日本国憲法をふまえ、自治体においても男女平等施策を条例化・制度化する動きがおこっています。日本が国際社会の一員として、すべての労働者が仕事と家庭を両立でき、真の男女平等社会を実現させていくことが強く求められています。しかし一方で、この流れを妨害して条例制定を阻止したり、改悪修正するなど「バックラッシュ」の動きも強まっています。企業も労働法制を改悪して労働者を長時間・過密労働で雇うなど、新たな権利侵害をはかろうとしています。男女平等に対するバックラッシュや大企業の雇用再編の動きは、日本の平和と民主主義の前進にとっても重大な問題です。


2.崩される安全・安心・地域経済 ―「構造改革」の帰結

(1)「安ければ良し」―公共サービスが営利でゆがめられ、住民の安全、生命が脅かされる

 公立保育所や学校給食、公共施設の管理運営など自治体の公共サービスを次々と民営化、民間委託、指定管理者制度化する動きが強まっています。自治体の全ての業務を対象に民間開放する「市場化テスト」まで導入されようとしています。このようなアウトソーシングは「安ければ良し」と、コスト削減を最優先しており、そのために住民の生命、権利が奪われる深刻な事故が引き起こされています。幼い子の生命が奪われた埼玉県・ふじみの市のプール事故は、施設を管理監督すべき市職員を減らし、安全教育を受けていない低賃金のアルバイトに現場を丸投げしていたことが原因になっていました。各地の公営住宅で事故や不具合を引き起こしているシンドラー社製のエレベーターも、低価格を提示さえすればまともな安全審査も受けずに容易に参入できる「安ければ良し」の入札方法が被害を拡大していました。

「構造改革」がうちだす「民間開放」がはらむ問題点を露呈させたのが「耐震強度偽装事件」でした。国民の安全を守るために厳格・公正に検査すべき建築確認業務が、民間企業にも開放されることによって営利追求の手段となり、「早く、甘く、安く」検査する建築主にとって都合のよい民間企業に申請が集中し、厳格・公正さが損なわれるようになったのです。

(2)環境、健康、安全をまもる機能が縮小・消滅

「大阪から公害をなくす会」が今年5月に実施した大気汚染調査(ソラダス)によると、大阪の大気汚染は数年前よりも深刻に悪化していることがわかりました。 

 ところが大阪府は環境行政を担ってきた環境情報センター、食とみどりの総合技術センター、水産試験場の三機関を統合し、府民の安全・環境をまもる部門を縮小・廃止しようとしています。さらに結核ワースト1の大阪で、零細企業の従業者を対象に結核検診などで大きな役割りを果たしてきた「はと号」(胸部エックス線検診車)を2007年度末には廃止しようとしています。「はと号」は昨年来から大きな社会問題になっているアスベスト対策でも府内の市町村に出向いて肺がん検診で活躍してきました。住民の環境を監督し、健康をまもる機能が次々と縮小・消滅させられているのです。

(3)公的保育・子育て支援の縮小、解体 ―あいつぐ児童虐待、増える待機児をどうするのか

 児童虐待など子どもの安全が脅かされ、多くの待機児が存在しているもとで、子育てに対する公的な支援を抜本的に強化することが求められています。しかし、公立保育所は民営化で減らされ、営利企業が参入して、保育サービスの深刻な質の低下がおこっています。この10月からスタートした「認定こども園」制度は、配置基準、施設などで最低基準が緩和され、入所・保育料を保護者と保育所の「直接契約」で決めるようになりました。「保育に欠ける児童」が不当に入所ができなかったり、保育料が釣り上げられたり、退所させられることもおこりかねません。各地で深刻化する児童虐待に対応し、地域の子育て支援を担う児童相談所や担当職員も、必要とされる体制にはとうてい追いついていません。

 不安定雇用の増加、国・自治体の公的サービスの後退、縮小が「子どもが欲しくても産めない」という深刻な事態を生み出しています。厚生労働省の調査(2002年)では20歳から34歳の男性正規労働者の既婚率は4割をこえていましたが、非正規労働者の既婚率は1割以下となっています。また理想とする子ども数より実際に産む予定のこどもが少ない理由に「子育てや教育にお金がかかりすぎる」が圧倒的に多く、20歳台では80%、30歳代でも75%を超えています。

(4)深刻な医師不足と患者の負担増 ―地域医療、自治体病院が危ない

国がこれまで長期にわたって医療費抑制策をとってきた結果、産婦人科医、小児科医に代表される医師不足や看護師の過重労働など、地域医療が危機に直面しています。100床あたりの医師数は13.7人で、アメリカの66.8人、イギリスの49.7人と比べても非常に脆弱な体制にあります。

その上、患者・国民には、療養病床の大幅な削減、高齢者の窓口負担をはじめとした医療費の負担増、「混合診療の拡大」、65歳以上の高齢者の年金からの保険料の天引きなどがおしつけられています。自分の住んでいるまちで子どもが産めず、長期入院患者や、リハビリの必要な人たちが次々と医療機関から追い出されています。自治体の財政難を理由に公立病院の経営が危うくされ、忠岡町立病院の廃止など自治体病院がなくなる事態まで起こっています。大阪府民に対する高度専門医療などを担ってきた府立5病院も大阪府から切り離され、独立行政法人化をされてしまいました。

(5)破壊される雇用、地域経済、農林水産業 ―地域社会そのものが崩壊する危険も

 大企業は空前のボロもうけをし「景気が回復してきた」と言われてはいますが、企業のリストラと海外進出による収益増の結果です。大阪の完全失業率は依然として全国平均よりも高く、製造業者も年々減少しています。大阪の大手企業は、労働者を都合よく働かせるために「働くルール」を無視し、「偽装請負」などの違法な雇用もまかり通っています。働いても生活保護以下の賃金しか支払われないワーキングプアも増大しています。サービス残業を合法化したり、わずかばかりの金銭支払いで経営者の不当解雇を免罪する労働法制の改悪もねらわれています。労働者の非正規雇用化は民間企業だけではありません。自治体が雇用する正規労働者は年々減らされ、急激なテンポで非正規化が進んでいます。正規労働者が減らされた分、非常勤、嘱託、パート、アルバイト、委託、派遣労働者などの非正規労働者に置き換えられ、その数は年々増加しています。この労働者の賃金は自治体の非情なまでの「コスト削減」によって低く抑えられ、その地域の民間労働者の賃金よりも低いところも多く、地域の地場賃金全体の相場を引き下げています。

 農産物の輸入自由化、大企業の農業参入などにより、日本の食と環境を支えてきた農林水産業が危機に瀕しています。大阪府の食糧自給率は2%。学校給食の食材に対する地元農産物の割合も2%と全国で最低水準です。大阪府内の農家の耕地面積は2000年から12.6%減少。耕作放棄地は7.8パーセントも増えています。

(7)行政が住民から遠くなる、自治が奪われる

 総務省と大阪府は、新たに合併の計画を推し進め、府下市町村に対して再び合併のおしつけをはかろうとしています。「三位一体改革」で国から地方への支出を削減し、財政危機に陥った自治体を国と民間金融機関の支配の下に置く「自治体破綻法制」まで計画しています。さらに、これまで行政が担ってきた公共領域から撤退し、撤退した領域を「新しい公共空間」として、民間企業、NPO、住民、ボンティアなどの市場に委ねようとしています。儲かりそうな領域は企業が参入してサービスを営利主義でゆがめ、儲からない領域は、安上がりのボランティアに下請けされることにもなりかねません。「これからの公共サービスは行政だけでなく企業・住民が担う」とされていますが、仝共サービスの担い手に必要な「専門性」が確保されるのかどうか、公共サービスに住民や利用者の意見が生かされ、民主的に運営がされるのか、9埓は引き続き必要な支援を行うのか、それとも責任をとらず住民に丸投げをするのかが問われます。いずれにせよ、公共サービスに「専門性」や「継続性」「安定性」、運営の「民主性」が保障されなければ、住民の権利を保障する役割を果たすことはできません。

 大阪府はこれまで担ってきた数々の業務を「分権」の名のもとに市町村に移譲し、福祉などの行政施策を打ち切り、府民のくらし・福祉を守る機能を解体させる道を進んでいます。この先には「道州制」があります。「道州」は人口1,000万人をはるかに超える広大な規模にもなり、およそ「地方自治体」の名に値しません。一方で、大型開発などのプロジェクトを推進したい大企業にとっては、行政手続が「緩和」され、住民との合意をはかることなく「自由」に活動ができるようになります。「道州制」は住民から都道府県を奪い、自治の機能を破壊して、国策と大企業が利潤を追求するプロジェクトを住民無視で推進する機関に変質させるものです。


3.憲法改悪が重大局面に ―9条とともに、地方自治の改悪がねらわれている

(1)安倍首相の唱える「美しい国」 ―その実像は、国民犠牲と戦争する国づくり

 安倍内閣はしきりに「日本を美しい国にする」と言っていますが、その実像は、日本を「戦争する国」に変え、住民に耐え難い犠牲を強制するものにほかなりません。「軍事大国化」と「構造改革の推進」というアメリカと財界がめざす2大目的を「国のかたち」として完成させるために、うちだされたのが昨年(2005年)10月に自民党が発表した「新憲法草案」です。その中でも、9条の改悪と、91条以下に盛り込まれた「地方自治条項」が現行憲法の平和主義と国民の福祉を根本から覆す重大な内容になっています。

(2)国民が権力を縛る憲法から、権力が国民を縛りつける憲法に

 「新憲法草案」は、国民が権力をしばっている現行憲法を根本的に転換して、権力が国民を「義務」でしばる構造につくりかえています。人権の上に「公益及び公の秩序」つまり「国益」を置き、国家に対する「国民の責務」を強調しています。「国益」とは言うまでもなく「戦争遂行」と「構造改革」です。いまの憲法が保障する平和主義も、国民主権も、基本的人権も、地方自治も、すべて「国益」のもとに従属させられるのです。

(3)住民と自治体を戦争に強制動員

 「新憲法草案」は、アメリカのしかける戦争に日本の軍隊をいつでも出動できるようにしようとするものです。国と自治体の「役割り分担」をうちだし、「外交・防衛」を国の専権事項としています。いま沖縄県や岩国市、座間市などで米軍基地の移転に反対する自治体ぐるみの運動が高まっていますが、このような自治体の動きを封じ込め、自治体に国への「協力」を義務づけ、戦争の遂行に住民を強制的に従わせることができるようにしています。「外国からの侵略やテロにそなえる」としている国民保護計画もこの動きと一体になって推進しています。

(4)福祉の公的責任を放棄 ―住民に「自己負担」おしつけ、憲法25条を実質的に改悪

 さらに「新憲法草案」は福祉に対する国の責任を放棄し、「弱肉強食の自己責任社会」をつくることをねらっています。そのねらいは91条以下の「地方自治条項」に如実に示されています。

国は「外交・防衛」など「国家の存立に関わる施策を重点的に担う」とし、福祉など住民のくらしや権利に関わる業務からは撤退するというのです。その上で、地方自治体は「住民に身近な行政を自主的、自立的かつ総合的に実施する」(91条の2)と、福祉は自治体が自らの「責任と負担」で実施するとしています。しかも住民には「負担を公正に分任する義務を負う」として「受益者負担」をおしつけています。福祉の財源に国費は極力使わず、地方税でまかなうことを基本としています(94条の2)。福祉の財源が足りなくなれば、住民に増税で多大な負担をおしつけるか、民営化することになります。企業の儲けにならなければ安上がりのボランティアに下請けするか、福祉施策そのものを取りやめることになります。

 憲法25条は「国はすべての生活部門について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と国の福祉に対する責任を明記しています。「新憲法草案」では、国民の支持の強い25条の条文には手をつけていませんが、地方自治に関わる条項をこのように定めることで25条を実質的に改悪しているのです。「新憲法草案」の地方自治条項は、福祉に対する国と自治体の「責任放棄宣言」と言ってよいでしょう。


4.「構造改革」を許さない、新しい変化と流れがおこっている。

住民犠牲の攻撃は厳しいものがありますが、一方でその問題点や矛盾が国民の前にも明らかになってきました。「構造改革」を許さない新しい変化と流れが各地で生まれています。この流れに確信をもって、職場と地域で運動をさらに広げることが大切です。

(1)民主的自治体の誕生― 東大阪市で、滋賀県で、住民の怒り、要求が政治を動かす 

負担と犠牲、ムダ遣いに怒る住民パワーによって、住民本位の民主自治体が誕生しています。7月に東大阪市では住民税の大増税などへの住民の怒りが、長尾民主市政を誕生させる大きなエネルギーとなりました。滋賀県でも、県民を犠牲にしてムダな新幹線新駅に税金をつぎ込む県政に対する怒りが県政転換に結びつきました。政治の流れを変える新しい動きが地域でつくられつつあります。

(2)断罪される「構造改革」―各地で違法判決、是正命令

「構造改革」がもたらす様々な問題についてこれを断罪する判決、命令が各地で下されています。
保育所民営化裁判では大東市、横浜市で「強引な民営化が子どもたちの権利を侵害した」と賠償命令を下しました。東京都練馬区では民間企業に委託した保育所が、短期間に保育士が大量に辞めて入れ替わり、保育の質が大幅に低下したために、練馬区が企業に対して異例の是正勧告を行いました。

 「日の丸」「君が代」を強制する東京都に対して、東京地裁は「憲法違反」の判決を下しました。
一見、磐石のように見えた政府・財界の「構造改革」も、その問題点や矛盾が明るみになる中で、司法や行政も是正を命じざるをえないようになってきています。

(3)住民、労働者の闘いの広がりと前進

 改憲を許さない幅広い人たちが結集する「9条の会」が大阪でも500を超えて広がっています。住民の闘いでリストラをはねかえす成果も各地で生まれています。守口市では学童保育事業は「廃止」されましたが、全児童対策事業に指導員全員の雇用を引き継がせ、学童保育事業の事実上の継続をかちとることができました。大阪市児童施設・トモノスでは、大阪市の強引な廃止に対して大阪市議会で一度は廃止決議を止めるなどの画期的な成果を築きました。大阪市大正区では住民・地元商工業者の運動で計画されていた大型店舗の出店をやめさせました。

 住民無視のリストラ対して、住民投票の実施を求める住民運動が吹田市、枚方市で展開されました。吹田市では梅田貨物の移転に対してくらしと環境を守れと広範な住民が結集。直接請求では4万人の要請が寄せられました。枚方市でも住民を無視して公民館を廃止しようとしましたが、「社会教育の主人公は住民である」という「枚方テーゼ」をまもれと多くの市民が立ち上がり、2万6千人の署名が結集されました。残念ながら市長与党の反対で議会での可決には至りませんでしたが、大阪における新たな住民運動の広がりと前進を築きました。
 企業における「偽装請負」を告発し、これを是正させるなど、「まともな働くルール」の確立を求める労働者の闘いも前進しています。松下プラズマでは青年労働者の勇気ある告発と、労働組合の追及が企業と行政を揺り動かしました。青年の雇用を求める運動も広がり、10月には大阪でも青年大集会を成功させました。自治体の公共ーーサービスに働く労働者に公正な賃金・労働条件の確立を求める「公契約」運動も労働組合の違いを越えて広がりつつあります。
 大阪市や八尾市における行政と「解同」の癒着に対して、あらためて「同和行政の終結・根絶を求める」闘いが前進し、地域に世論をつくりだしています。医師不足、産科廃止など公的病院の縮小・統廃合の動きが強まる中で、地域医療を守れという運動も和泉市など各地で展開されています。

 国の地方に対する財政支出を一方的に削減する「三位一体改革」には、全国の首長、地方団体から、「反対」「異論」があいついでいます。大阪においても国に異論をとなえる首長が現われています。強引な市町村合併に対して、自立したまちづくりをめざす小規模町村の共同がすすみ、「小さくても輝く自治体フォーラム」には多くの町村自治体が集まっています。合併した市町村でも、地域自治組織の設置、活用など住民参加をはかるための様々な試みが行われています。


5.見直そう、問い直そう自治体の仕事と住民の安全・安心

    ― 憲法を対抗軸に「自治体らしい自治体」をめざして

 来年2007年の一斉地方選挙、参議院選挙は、平和、住民のくらし・権利に関わって日本の進路を左右する大きなたたかいとなります。改憲と「構造改革」への対抗軸に日本国憲法をすえ、「自治体らしい自治体」を実現させていく世論と運動を一層強化していくことが求められています。

(1)公共サービスは「必要充足」「応能負担」の原則をつらぬくべき

地方自治体は、「住民の福祉の増進を図る」(地方自治法第1条)と法律で明記されているように、憲法を住民のくらしの中に生かし、権利を保障する役割を担っています。その中味は、「地域の共同の利益を守り実現すること」、「住民の基本的人権を保障すること」です。

 そのために自治体、日本国憲法をふまえて、「必要充足」と「応能負担」の大原則をあらゆる施策の中につらぬかなければなりません。

「必要充足」の原則とは、福祉など公共のサービスの内容や水準は、憲法が定める権利を保障するための必要に応じて決めるということです。どれだけの料金を払えるのかで決めるのではありません。

 「応能負担」の原則とは、福祉など公共のサービスにかかる費用の負担は、住民、企業、団体のそれぞれがもつ負担能力に応じて負担をするということです。所得の多い人は応分の負担をし、所得の少ない人は、憲法で保障された最低限度の生活が損なわれない範囲で負担をするというものです。もっとも負担すべきは莫大な利益をあげている大企業です。どれだけの福祉や公共サービスを受けたかで料金が決められるのではありません。

「必要充足」「応能負担」の原則は、これまでの福祉や社会保障、税金など各種の制度に適用されてきました。たとえば認可保育所の入所は保護者の負担能力でなく、「保育に欠ける」かどうかを基準に決定しています。保育料の負担額は、どれだけの保育サービスを受けたかではなく、「家計への影響を配慮して」決めることになっています。税金も、負担能力のある人ほど所得に対する負担割合を高くする累進課税が原則とされ、低所得者には、非課税限度額の設定、減免措置などの施策がとられています。財政力の乏しい自治体にナショナルミニマムを保障するために交付される地方交付税もこの原則にもとづくものです。国と自治体が「必要充足」「応能負担」の原則をつらぬいてこそ、憲法が定める権利が住民に保障されるのです。

(2)住民が名実ともに「主権者」となる自治体のしくみを

さらに、地方自治体が住民の福祉の増進を図り、公共性を守って機能していくためには、憲法92条の「地方自治の本旨」にもとづいて、住民が名実ともに「主人公」となる自治体の組織・運営が確立されなければなりません。

 地方自治を解体する「道州制」の導入、市町村合併の推進、議員定数の削減、行政サービスの縮小・解体が進もうとしている中で、あらためて住民が名実ともに「主権者」となる自治体のしくみを確立していくことが求められます。

 地方自治体を国と対等平等とする「団体自治」を保障し、―嗣韻寮爾届く適切な規模の行政区を設定する、⊇嗣嬰衂次⊂霾鷂開、地域協議会など住民が主権者として自治体の運営に参加できるしくみをより豊かに発展させていく必要があります。

(3)「住民と自分のためにいい仕事をするために」―自治体労働者・公務公共労働者の役割り

憲法を生かし、住民本位の自治体をつくりあげていくためには、住民の第一線で仕事をする自治体労働者・公務公共労働者の働き方がそれにふさわしいものにならなければなりません。

 自治体の公共性・公共サービスを維持・発展させるためには、その業務を担う労働者に高い専門性が備えられなければなりません。その専門性は継続して働くことで育成されます。この専門性が保障されるためには、住民のために安心して働きつづけられる賃金・労働条件が保障されなければなりません。同時に仕事について住民の立場で上司に対してものが言え、憲法を生かすために自らの裁量で仕事を改善していける権利が確立されなければなりません。

国の言いなりでなく、住民の立場で仕事をしようと努めている自治体労働者も多くいます。大阪府下衛星都市の納税職場の窓口で、滞納の一部を支払いに来た住民がいました。「今はどうしてもこれだけしか都合がつかないんです」と住民は言います。応対した職員が「ほかに国保の滞納はありませんか。そちらは支払いましたか?」と尋ねると「いいえ、そちらも払ってません」という返事でした。「それなら、先に国保を払ってください。病気になって医者にかかれへんかったら、あなたの命と健康に障りますから」とその職員は税の収納をいったん留保し、住民の医療を受ける権利を保障することを優先しました。「滞納整理に行くと住民の顔や生活が見える。滞納する住民はいろんな生活上の困難を抱えている。これに私たちはどう対応するのかが問われている。私たちの仕事は税務労働であると同時に福祉労働でもあるのです」と、自らの仕事を納税者の権利保障の立場から問い直す税務労働者もいます。「住民と自分のために、いい仕事がしたい」という要求を結集し、職場で地域で、住民とともに自治体の仕事のあり方、行財政の点検・改善の運動をすすめていくことが大切です。

(4)「分断と対立」をのりこえ、地域に連帯と共同を

 「構造改革」が住民や労働者の中に分断と対立を意図的にもちこんで推進されようとしているもとで、これを克服し、地域に連帯と共同を広げることが重要になっています。とりわけ、「公務員バッシング」で自治体労働者と住民との結びつきが意図的に切断されようとしている中、自治体労働者・公務労働者はすすんで地域の中にはいり、住民と胸元を開いて対話をすすめていく勇気と決意が求められています。大阪自治労連はこの1年間、国家公務員や教員など他の公務労働組合の仲間にもよびかけて共同で「タウンミーティング」を各地で実施し、「格差社会と公務の役割り」をテーマに、民間労働者、地域住民と対話と懇談を重ねてきました。そこでは多くの方々から行政への怒り、不満、自治体労働者への期待、激励の声が寄せられています。

 いまこそ「見直そう、問い直そう、自治体の仕事と住民の安全・安心」をスローガンに、「自治体らしい自治体」をつくるために自治体労働者・公務公共労働者と住民との共同を一層強め、拡大することが求められています。この「第16回大阪地方自治研究集会」の成功を契機に、大阪における地方自治運動の新しいうねりをつくりあげていきましょう。    以上
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